研究課題/領域番号 |
23701110
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
荻原 秀明 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40568953)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | CBP / BRG1 / 合成致死 / クロマチンリモデリング / ヒストンアセチル化 / ヒストン修飾 / SWI/SNF / 分子標的治療 |
研究概要 |
本研究では、がん抑制遺伝子の中でパラログ遺伝子が存在する遺伝子群に着目して、がん抑制遺伝子と合成致死性を示すパラログ遺伝子を同定することが目的である。今までに我々の研究グループは、肺がんのゲノム異常の解析から肺がんにおけるCBP、BRG1等の不活性化遺伝子変異が高頻度10%程度であることを見出してきた。CBPおよびBRG1には機能的パラログ遺伝子リジンアセチル化酵素遺伝子(KAT)、クロマチンリモデリング遺伝子(CR)が存在している。申請時点でCBPおよびBRG1の変異株においてKATX、CRXをそれぞれ抑制すると生存率が顕著に低下する、即ち合成致死性を示すことを見出した。本年度は、それぞれの変異細胞株の検体数をさらに増やしてもCBPとKATX、BRG1とCRXが合成致死性を示した。また、AnnexinV染色やSA-βGal染色によって、合成致死の原因がアポトーシスや細胞老化によるものかを検討するために条件検討に着手した。BRG1変異株において、CRXの発現レベルが低い細胞から高い細胞があり、CRXの発現が高い細胞ほどCRXをsiRNAで抑制することによる致死性が高いことが分かった。これは、BRG1の変異による機能的欠損は細胞生存のためにCRXに依存していることを示していると考えられた。CBP変異株およびBRG1変異株においてドキシサイクリンの添加によるshKATXまたはshCRXを発現することで薬剤添加条件によるKATXあるいはCRXを抑制できる細胞株を樹立した。本年度はこれらの細胞株をマウスに移植するための条件検討に着手し、次年度はこれらの細胞株をマウスに移植し、生体内においてCBP/BRG1変異がん細胞でKATX/CRXを抑制することで腫瘍増殖抑制効果が得られるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1.CBPとBRG1それぞれのパラログとの合成致死性の検討における研究目標において、in vitro実験系でのそれぞれの合成致死性を示す遺伝子の同定することができた。さらに合成致死における細胞増殖抑制機構を検討している。また、細胞株における結果が生体内で反映されるかを検討するために細胞株を樹立した。研究2. 合成致死性を示す新規のがん抑制遺伝子-パラログ遺伝子群の探索において、我々のグループおよびデータベース等からがんにおける失活遺伝子を探索し、がんにおける変異頻度等を考慮して選定を行った。交付申請書に記載した計画に基づきおおむね予定通りに研究を推進することができたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究1.CBPとBRG1それぞれのパラログとの合成致死性の検討における研究目標において、in vitro実験系でAnnexinV染色、SA-βGal染色により合成致死の機構を確定する。またin vivo実験系で必要となる細胞株の樹立に成功したので、マウスへの生着等の検討を進めるとともに、生体内での合成致死遺伝子候補の抑制実験を行う。研究2. 合成致死性を示す新規のがん抑制遺伝子-パラログ遺伝子群の探索において、がんにおいて高頻度に失活変異がある遺伝子に着目した結果から選定した。さらにその候補遺伝子に対する合成致死遺伝子の探索をin vitroの実験系で検討する。標的遺伝子が同定され多場合はin vivo実験系のための細胞株の樹立等の準備に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には、細胞培養、抗体、siRNA等の消耗品の購入に使用する予定である。
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