研究課題/領域番号 |
23710001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
濱田 洋平 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 特任助教 (50323267)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / インドネシア / 熱帯泥炭 / 溶存酸素 / 温室効果ガス / 地下水位 |
研究概要 |
近年の土地開発の進行に伴い,蓄積された土壌炭素の放出が問題となっているインドネシアの熱帯泥炭地域において,土壌中における温室効果ガスの動態とそれに及ぼす水分条件の影響に関する研究を行った。野外観測を行うに当たり,湿地の水面下に溶解している酸素および温室効果ガスの濃度を測定するための手法ならびに簡易な装置をそれぞれ開発し,現地試験を行ったところ良好な運用結果が得られた。これまでの観測から得られた結果に基づくと,まず溶存酸素は,地表水中の濃度は比較的高いものの,地中水では深度によらず極めて低い濃度となった。また,多くの地点で水位と溶存酸素濃度との間に正の相関が見られた。同じ水位の条件で比較すると,木本植生が失われた火災跡地の溶存酸素は,火災や排水の影響を受けていない自然林に比べて低くなった。溶存酸素濃度は水面下にある泥炭の分解速度を決定する重要な因子であり,これらの事実は今後の水位変化や植生条件が泥炭分解に及ぼす影響を推定する上で重要な知見である。温室効果ガスの濃度は,各深度の水と平衡状態にある空気中でCO2で最大4~5%,メタンで3.5%に及んだ。水への溶解度はCO2で大きくメタンで小さいため,実際に水中に含まれているメタンの濃度はこれより低いが,これらの高い濃度は水中におけるガス生成と潜在的な高いガス放出源の存在を示唆する。亜酸化窒素の濃度は全般的に低く,一部の地点・深度を除いて検出されない場合が多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始より一年が経過し,本申請課題はおおむね順調に進展している。主な理由として,以下の3点が挙げられる。1)研究開始の初期に開発した,溶存ガス成分の採取・測定手法の現地への適用がうまくいったこと。2)現地スタッフによる作業代行を含む,観測体制への協力が得られたこと。3)乾季に生じる泥炭火災による観測サイトのダメージがなかったこと。研究対象地域は2009年に大規模な森林火災が発生し,いくつかの研究グループが設定している観測サイトが大きなダメージを受け,研究の進展に支障を来した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。1)引き続き現地に渡航しての定期的な野外観測を行う。2)これまでの研究成果について,中間報告的な学会発表を行う。3)最終的な研究成果をとりまとめ,論文として投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の未使用額は,3月中に発注した物品に対する支払いが手続き上4月末となったためであり,既に執行されている。
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