研究課題/領域番号 |
23710005
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
斎藤 琢 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 特定研究補佐員 (50420352)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 気候変動応答 / 炭素 / 水 / 流域 / 森林 |
研究概要 |
本研究では,これまでに生態系に関する多くのデータ,知見が蓄積され,また,メソ気象モデル(MM5)による高解像度の気象値が得られている岐阜県・高山市・大八賀川流域を対象とし,山岳地域森林生態系を対象とした炭素・水循環の気候変動応答を評価する。本年度は,とくにフィールド観測データに基づいた生態系モデルの検証・最適化とモデルによる落葉広葉樹林,常緑針葉樹林の炭素収支比較を行い,下記を明らかにした(Saitoh et al. in press, Eurasian J. For. Res.)。(1)タワーフラックス観測,バイオメトリック法,チャンバー法に基づく炭素収支データを検証データとして利用することで,両生態系における炭素収支をモデルにより高精度で推定可能となった;(2)常緑針葉樹林では純生態系交換量(NEP)のピークが4-6月にあらわれ,落葉広葉樹林ではNEPのピークが7-9月にあらわれた。この両生態系における異なるNEPの季節変化は,主に4-6月のフェノロジーの違いとそれに伴う総光合成量(GPP)の大きさの違いに起因していることが示唆された;(3)年積算GPP,生態系呼吸量(RE)は,落葉広葉樹林と比較して,常緑針葉樹林で大きく活発な植生活動が行われていることが明らかとなった。この両生態系のGPP,REの年積算値の相違は,主にバイオマス量の相違の影響を反映していることが示唆された。来年度は,これらの検証・最適化されたモデルをと将来予測データを利用した流域スケールの気候変動応答解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測値に基づく生態系モデルの検証・最適化が行われ,これらの研究を基した論文がEurasian Journal of Forest Researchに掲載された。また,気候変動の現在値/将来予測値として大気-海洋結合モデル(AOGCM)の出力値に関しては,これらの予備解析を行い,生態系モデルに入力するための準備が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に地上観測データを利用して検証・最適化された生態系モデルを用いてプロット・流域スケールでの炭素・水・熱交換量気候変動応答解析を行う。常緑針葉樹林,落葉樹林サイトを対象として,生態系モデルによって推定された炭素・水・熱交換量などの定量値を用い,とくに次に示す現在値/将来予測値のサイト間比較,シナリオ間比較に焦点を絞って解析を行う。サイト間比較は炭素・水・熱循環の環境応答に関する総合的な検討を行うこととし,シナリオ間の比較を同時に行うことで,常緑針葉樹林および落葉針葉樹林の異なる植生間での気候変動下における環境応答の共通性と相違性を明確にする。これらを流域スケールに拡張し,流域スケールでの炭素・水・熱交換量気候変動応答解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,おもに研究成果発表に必要な旅費と出版物に関連した費用が必要である。研究成果の発表は国内2回(水文・水資源学会,生態学会),国外1回(Phenology2012)を予定している。研究成果の取りまとめとしては、国際誌2本の投稿を考えており英文校閲費、論文投稿費、別刷代を申請する。また,データ量が膨大となるため,データ整理のために院生を雇用する。
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