研究課題/領域番号 |
23710011
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
吉田 光宏 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, ポストドクトラル研究員 (60565555)
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キーワード | 海洋 / シアノバクテリア / ファージ |
研究概要 |
海洋シアノファージ感染による宿主(シアノバクテリアSynechococcus)溶菌に由来する溶存態有機物(DOM)の網羅的プロテオーム解析に向けて、海水試料からファージの分離を昨年度から行ってきたが、分離できなかった。実験に用いるファージ株を取得すべく、シアノファージ-シアノバクテリア感染系のモデルとして代表的なファージS-PM2の分譲を受け、また、宿主株を寄託センターから購入した。実験室において、シアノファージ-宿主シアノバクテリア培養株の感染系を確立した。こうして容易に入手可能なタンパク質試料を使用して、タンパク質の抽出法ならびに濃縮法の検討を行った。現段階において、細胞画分試料には超音波処理による抽出を行い、その後の濃縮過程として、溶存態画分とともに個別にトリクロロ酢酸(TCA)沈殿法に供することで、両方の画分から一定の収量が得られるタンパク質抽出系を確保した。SDS-PAGE解析の結果から、ファージ感染後において一部のタンパク質が宿主細胞から消失し、分解を受けるものと推察された。またその一方で、ファージによる溶菌を受けてもなお細胞レベルの高分子構成を保ったままのタンパク質、あるいは二次的に高分子粒子形成を伴ったタンパク質が存在し、残存している可能性も示された。今後、二次元電気泳動ディファレンシャル解析による高解像度プロテオーム手法を行うことにより、ファージ感染に応答する宿主プロテオームの組成変動、および海洋溶存態有機物プールのソースとなり得る主要タンパク質を明確化して行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度において、海洋性シアノファージの感染時における宿主(シアノバクテリアSynechococcus)の溶菌に由来する溶存態有機物(DOM)の網羅的プロテオーム解析を行うため、解析に使用する宿主シアノバクテリアの株を寄託センターから購入したが、生育しないという問題が発生した。本宿主の生育を最適化するために、多岐にわたる培養条件の検討や複数回に及ぶ購入プロセスに長い日数を要したこと、また、本宿主の成長速度が非常に遅いことが原因で研究の遅延を招いた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立したシアノファージ-宿主シアノバクテリア培養株の感染系を用いて、シアノファージ感染過程における宿主プロテオームを網羅的に解析するために、二次元電気泳動ディファレンシャル解析による高解像度プロテオーム手法を使用することにより、研究を円滑に進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度においては、実験に使用する宿主シアノバクテリア株の培養条件の検討に非常に多くの時間が費やされ、プロテオーム解析を進めることができなかった。そのため、これにかかる研究費をそのまま次年度に持ち越し、実験を行う予定である。
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