研究課題/領域番号 |
23710012
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
氏家 由利香 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 研究員 (20573041)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 海洋プランクトン / 分子系統解析 |
研究概要 |
本研究は,海洋プランクトン・浮遊性有孔虫について,(1)生物学的種の同定,(2)それら種ごとの共生藻と摂餌物の同定,(3)共生藻の違いが宿主(浮遊性有孔虫)の炭酸塩殻の形成に及ぼす影響を評価することを目的としている.初年度である平成23年度の研究では,浮遊性有孔虫2つの形態種について,small subunit ribosomal DNAの分子系統解析によって生物学的種の同定を行った.またこれら2種のうち1形態種にて,large subunitおよびinternal transcribed spacer rDNAの分子系統解析により共生藻の同定を行った.(1)浮遊性有孔虫の生物学的種の同定*太平洋からインド洋の赤道域に主に分布する1形態種では,3つの隠蔽種が初めて同定された.各々の隠蔽種は,同一の海流下にある太平洋・インドネシア海域・インド洋の3つの異なる水塊に特徴的に分布することがわかった.これにより水塊と浮遊性有孔虫の集団の関係が明確になった.*土佐湾において毎月同一地点でプランクトンネット試料を採取し,温帯から熱帯域に分布する1形態種について,生物学的種の産出を精査した.4つの隠蔽種が同定されたが,季節によってそれらの産出頻度が異なることがわかった.(2)共生藻の同定 土佐湾のプランクトンネット試料から産出した上記の形態種について,共生している渦鞭毛藻類の同定を行った.まず,個体内に複数の種が共生することが確認された.また同一隠蔽種間でも異なる種が共生していることがわかりつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的を達成するため,初年度の研究では,なるべく広範囲に分布し,かつ通年的に産出する浮遊性有孔虫種の特定を行った.分子系統解析に基づく生物学的種の同定を進めており,それら種ごとの水塊に特化した分布状況や,時系列にそった産出頻度の違いは,新規の成果である.しかし,こうした宿主(=浮遊性有孔虫)の同定に対し,共生藻の同定は進捗状況が遅れをとっている.渦鞭毛藻類について試験的に同定を試みているが,試料数も多く,また簡便な同定方法を確立していないため,データの蓄積が未だ少ない.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成させるため,平成24年度では,以下のように研究を推進する.(1)重点的に共生藻の遺伝子配列の情報を増やし,それらのデータをもとに,共生藻類の簡便な同定方法を確立する.(2)ユニバーサル・プライマーを用い,浮遊性有孔虫の個体内に含まれる真核生物由来のDNA断片を読み取り,共生藻や未消化の餌について特定する上で,データの比較がスムーズにできるよう,データベースを構築しておく.(3)宿主である浮遊性有孔虫については,生物学的種の同定が進んでいるため,分離し別途保管してある炭酸塩殻について,安定酸素・炭素同位体比の測定をすすめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の計画に基づく経費執行について,4月に支払いすべき経費が残っているため,次年度使用額が存在するように見えるが,実際には,全額執行予定である.そのため,次年度の研究は,当初の計画通り進める予定である.
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