研究課題/領域番号 |
23710012
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
氏家 由利香 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 研究員 (20573041)
|
キーワード | 海洋プランクトン / 分子系統解析 / 同位体比への生物効果 |
研究概要 |
本研究では浮遊性有孔虫を材料として、それらの遺伝子型に基づき共生する生物や摂餌物の同定、また共生生物の違いが浮遊性有孔虫の炭酸塩殻の形成に及ぼす影響を評価することを目的としている。平成24年度までの研究で、土佐湾における定点試料採取を12ヶ月分連続的に採取した。これらの試料から共生生物をもつことが知られ、また殻の地球化学的分析に最もよく使用されるGlobigerinoides ruberについて研究を進めた。 (1)土佐湾に産出する形態種G. ruberには、4つの遺伝子型が含まれることがわかった。本形態種では世界の海洋で6つの遺伝子型が見つかっているが、研究対象域でほとんどが産出するだけでなく、産出頻度は異なるものの季節によらず同海域に生息していることが明らかになった。 (2)(1)で同定した遺伝子型について、炭酸塩殻の形態観察を行った。しかし、現時点の手法で形態形質の有意な違いを得ることはできなかった。 (3)形態種G. ruberについて、真核生物用のユニバーサルプライマーを用い、Large subunit rDNA配列を得た。細胞内に含まれるものとして、共生藻として知られる渦鞭毛藻Gymnodinium beiiがほぼ全研究対象個体から得られ、他に恐らく摂餌物の残存と考えられるカイアシ類が同定された。 (4)共生藻Gymnodinium beiiには複数の遺伝子型が報告されているが、本研究の試料では3遺伝子型が見つかった。しかし、(1)における宿主(浮遊性有孔虫)の遺伝子型と共生藻の遺伝子型の関係に規則性はなく、また季節別の違いも不明瞭であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的を達成するため、本年度は宿主と共生藻の遺伝子型の同定、といった生物情報の取得を中心に行った。これら両者の関係については、これまで世界で得られている情報を含めて様々な系統解析を試み、精査する必要がある。共生藻の違いがもたらす炭酸塩殻形成への影響は、1個体ずつの安定酸素・炭素同位体比の測定を行う必要があるが、微量サンプルとなるため、測定方法を考案する必要がある。 一方、摂餌物については、野生個体を研究材料としているため消化のスピードなどがコントロールできておらず、LSU rDNA配列で認められたカイアシ類等が餌となっているかどうか明確にできない。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度では、以下のように研究を完遂する。 (1)共生生物および残存する摂餌物の遺伝子について蛍光プローブによる観察を試みる。 (2)宿主(浮遊性有孔虫)の遺伝子型間において、殻を溶かして安定酸素・炭素同位体比の測定を行う前に、殻の形態形質の差異を抽出する。従来の手法では難しいことがわかったため、micro-focus CT-スキャンを用いて形態計測を行う。 (3)殻の安定酸素・炭素同位体比の測定を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|