研究課題/領域番号 |
23710016
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
芹川 裕加 富山県立大学, 工学部, 研究員 (50598977)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 水銀 / シミュレーション / インドネシア |
研究概要 |
インドネシアでは金採掘が活発に行われ、その精錬に多量の水銀が使用されている。使用された水銀の多くは処理されることなく大気中に放出されているものと推測される。従って、金精錬所の存在は近隣住民に健康被害を生じかねない状況であるにもかかわらず、周辺地域の大気中の水銀濃度はこれまでほとんど測定されていない。そこで、インドネシアで金精錬が活発な中央スラウェシ州のパル市を対象として、時間的に連続な水銀の空間分布をCHAM 社の大気拡散シミュレータPhoenics を用い推定し、長期にわたる住民の水銀暴露量の把握を試みた。まず、2011年7月と9月に計3回、パル市内の計22地点で同時に大気中水銀濃度を測定した。測定には独自に開発したアクティブサンプラーならびにパッシブサンプラーを使用した。この実測データを用いて大気拡散シミュレーションを実施し、水銀濃度の空間分布を再現した。これにより、金精錬所中心部ではWHOのガイドライン1000ng/m3を超える高いガス状水銀が絶えず大気中に放出されていることが推定された。また、実測データの存在しない他の期間においては、連続して取得した気象データを用いてシミュレーションを実施することにより水銀の空間分布を推定した。風向、風速などシミュレーションに必要な連続的気象データは、金精錬所の西側に位置するパル市中心部と北側に位置するTadulako 大学に気象計を設置することにより求めた。2つの気象計のデータからパル市では日中に風速が大きい北風が吹き、夜は弱い風速の南東の風が毎日繰り返し吹いていることがわかった。この結果、金精錬所の風下にあたる一般の市民が住む地域では24時間の水銀暴露量がかなり高くなった。しかし、風の吹いている時間帯にその地域から離れることで水銀の暴露量をかなり抑えられることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パル市に設置した気象計の不具合や大気拡散シミュレータPhoenicsの理解が不十分だったため当初の計画より進行が遅れ、23年度中に行う予定だった精錬所の増加に伴う水銀濃度増加の将来予測シミュレーションを実施することができなかった。しかし、24年度中に目的を達成することは可能である。
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今後の研究の推進方策 |
パル市におけるシミュレーションは継続するとともに、中央カリマンタン州タカラシ村のケースについても精錬所からの水銀放出量を推算する。現地の民家に設置してあり、連続して得られる気象計のデータを用いて水銀濃度の時間的に連続な空間分布の推定を行い、これにより住民の水銀暴露量と健康影響を推定する。得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
インドネシアにおける水銀濃度の実測値を得るための調査旅費とそれらを分析するための分析用消耗品類の購入。また、インドネシアのTadulako 大学において水銀濃度を測定してもらうための機器の輸送費。さらに、得られた結果を現地の住民や学会において発表するための旅行費。
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