研究課題/領域番号 |
23710021
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
武内 章記 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (10469744)
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キーワード | 水銀同位体 |
研究概要 |
平成24年度は日本近海で採捕されたマグロと、湖沼環境における上位消費者に位置しているマスの水銀同位体分析を実施したのと同時に、さらなるデータ蓄積のための試料採集と試料の均質化を図った。こうした魚類中の水銀濃度が比較的高いことが知られているが、その水銀の起源を特定するために水銀同位体分析を推進している。主要なマグロ水揚げ港で、日本近海で採捕されたマグロの筋肉片の一部を頂戴したり、購入したりした。そうした筋肉片の均質化と水銀定量を実施した。またインド洋で採集されたマグロの筋肉片の水銀定量を実施した。結果は乾燥重量ベースで0.2から1.6 ppmであった。それらの比較的濃度が高い日本近海マグロサンプルの水銀同位体分析を実施して、水銀同位体比が0.55から0.68‰であるという知見を得た。また奇数の水銀同位体比に1.56から1.76‰の非質量依存同位体分別効果の影響に関する知見を得た。これらの結果から海洋環境中に光還元した水銀の存在を示唆しており、光還元した溶存水銀はガス状の原子状水銀に変化することが知られているために、水環境から大気環境へ水銀が供給されていることを示唆している。これらに加えて、マグロの国際標準物質中の水銀同位体分析を行ない精度管理を実施した。これらの知見および結果を第21回環境化学討論会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに順調に試料採集と均質化を実施して、水銀定量と同位体分析を実施している。これまでに採集した31個体のマグロと24個体のマスの総水銀定量を実施した。今後はこうした試料の水銀同位体分析を推進し、蓄積している水銀の特異性を明らかにする予定である。最終的には、生物中に蓄積している水銀の同位体比から大気由来水銀の特定を可能にする手法開発を目指しており、今後はさらなるデータ蓄積を図り、解析に注力する。
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今後の研究の推進方策 |
生物試料の採集には常に既得権が伴い、統計学的に仮説を立証するためには相当数のデータが必要となる。そうした中で、本栖湖に生息するマスの相当数の採集が困難であるのと同時に、本栖湖は毎年マスを放流しており、その環境を適切に示しているか不明である。そのため湖沼環境の大気由来水銀の特定には摩周湖のマスの分析を進めている。またマグロ試料に関しても継続して日本近海の試料の採集に務めるとの当時に、インド洋のマグロの水銀同位体分析を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は2年に1度開催される国際水銀学会がエジンバラで開催される。その学会でインド洋と日本近海で採捕されたメバチマグロとキハダマグロの水銀同位体比の比較に関する発表を行うための学会参加費と旅費に充てる。また継続してデータ蓄積を推進するために、分析に必要な高圧ガス、試薬、そして汎用実験器具の購入に使用する。
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