研究課題/領域番号 |
23710024
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
森野 悠 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 研究員 (50462495)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 大気化学 / 大気モデル / 有機エアロゾル |
研究概要 |
二つの二次有機エアロゾル(SOA)モデル(揮発性ビンモデル(VBS) と詳細反応モデルMCM))をボックスモデル上で開発し、粒子化計算手法や化学反応式による常微分方程式の計算手法を検討した。その結果、VBS、MCMともに、3次元モデルに適用可能な高速のソルバーでも十分な計算性能が得られることが明らかとなった。また、三次元化学輸送モデルの入力データである、揮発性有機化合物(VOC)、および半揮発性のVOC(SVOC・IVOC)の排出プロファイルを詳細成分別に収集して、発生源データを整備した。また、先行研究を基に、VBSでの酸化速度・蒸発エンタルピーなど、粒子化モジュール中のパラメタを整備した。なお、当初はVBSの用途をSVOC, IVOCからのSOA生成計算と想定していたが、VOCからのSOA生成計算にも有効であるという先行研究の報告を受けて、その粒子化計算モジュールをVBSに追加した。VBS、MCMとも、三次元化学輸送モデルに実装して、関東地方におけるテスト計算を実施した。その後、首都圏と東京の条件下で1ボックスモデル計算を実施して、従来モデル(収率モデルなど)と比較するとともに、VBSとMCMで利用される物理・化学パラメタの妥当性を詳細に検討した。このボックスモデル計算の結果より、VBSでVOCからのSOA生成過程を考慮することによりSOAの再現性能が向上すると見積もられた。また、開発したモデルを用いて首都圏と東京におけるO3とSOAの発生源解析を実施した。その結果、VBSによると、VOC(特に芳香族炭化水素とテルペン類)の寄与がSVOC・IVOCよりも大きな寄与を持つと計算された。平成24年度には、この推計の精緻化を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二つのSOAモデルについて、当初の予定通りに、ボックスモデル上での開発、排出量など入力データの整備、計算手法の検討・最適化、三次元モデルへの実装を行った。 それらのモデルを用いてO3とSOAの発生源解析を実施したこと、VBSモデルをVOCからのSOA生成計算にも適用したことなどから、本研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に予定通りに研究が進展したので、平成24年度は予定通りに二つのSOAモデルの三次元モデル上での計算とその結果の解析を主な研究課題とする。MCMにおいては、詳細VOC成分の蒸気圧が結果に大きな影響を与えるものの、推計手法ごとに大きくばらつき、計算結果の大きな不確実性の要因なので、この推計手法の検討を行う。また、三次元モデル上でのMCMによる官能基別・成分別SOA濃度の計算結果を基に、SOAの発生源解析の精緻化と健康影響評価を行う。また、平成23年度に引き続いてVBSの物理・化学パラメタの検討と精緻化を行うとともに、三次元モデルでの計算結果を基に、詳細なSOA濃度の再現性能評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、三次元モデル計算を本格的に行うことからデータ容量が膨大になるので、データサーバを購入する。また、研究結果の発表のための旅費・論文投稿料を使用する。
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