研究課題
研究目的に沿って、主に以下の研究内容を実施した。データサーバーを構築し、衛星観測データおよび、客観解析データ、数値実験データを収集し、解析に使用できるようデータの加工を行った。衛星観測データは、雲、微量気体成分の情報を提供しているCALIPSO/CALIOP、Aura/EOS MLS、MODISデータを主に取得した。また、現在リトリーバル処理中のISS JEM/SMILESのデータ (2010年10月~翌4月) に関する情報収集を行った。気象場データとして、ECMWF、NCEP、JCDAS、MERRAの客観解析データセットを取得した。さらに、数値実験データとして、全球雲解像モデルNICAMの2009年12月から2010年2月の計算結果を取得した。また、GEOS-5に関する情報収集を行った。NICAMデータの有用性の検証として、2010年1月に発生した成層圏突然昇温に注目した事例解析を行った。NICAMデータでは衛星観測では得られない、上昇流、非断熱加熱項等のデータを提供している。解析の結果、客観解析データ等のこれまでの結果と同様に、突然昇温が現実よりも5日程早く発生していたものの、力学場に関しては突然昇温現象が再現されていることがわかった。また、突然昇温オンセット日後に、対流圏内の積雲活動および対流圏と成層圏内の循環場が強化されていることが確かめられた。しかし、衛星データとの比較より、上部対流圏以高の水蒸気、雲関連物理量は、現実をうまく再現できていない可能性がでてきたため、本研究では次年度以降、NICAMデータ内の力学的物理量に着目して解析を進めることにした。上記解析結果を国際学会で発表した。
2: おおむね順調に進展している
達成されている点:研究計画に基づき、データサーバーの構築、データ収集と加工、さらに取得した衛星観測データおよび客観解析データ、数値実験データ質の評価を行った。数値実験で突然昇温が再現されていることが確認され、対流圏と成層圏間で連続して循環場が強化されていることを明らかにした。得られた成果を国際学会で発表した。達成されなかった点:計算機リソースの制限 (節電含む) 等で複数事例を計算する数値実験が予定通り行えず、当初予定していた類似事例の合成解析が行えなかった。衛星観測データとの比較の結果、数値実験内の上部対流圏の雲微物理過程の改良が必要であることが判明し、本年度は雲、水蒸気データを利用した定量的な解析を実施できなかった。
初年度より、引き続き、衛星観測データおよび客観解析データとの比較を行いつつ、数値実験 (NICAM) データの力学場の解析を実施し、突然昇温オンセット前後の対流圏内の力学場の変化に特に注目して解析を進める。さらに、当初研究計画にあるように、衛星観測データを同化しているGEOS-5による数値実験計算を実施し、事例を増やすことで突然昇温前後の対流圏、成層圏内の力学場の変化を総合的に理解することを目指す。繰越額が発生した主な事由は、年度初めに、使用できる予算が3割削減されるとの通知を受け、予定していた計算機リソースを、研究推進に支障の無い範囲で最小限に留めて導入したこと、および当初予定していた数値実験が節電の影響で実施されなかったことから、それを保存する媒体が必要でなくなったことが挙げられる。
次年度の研究費の主な使用目的は、データサーバーの性能強化のためと、数値実験データ蓄積のためのハードディスクの増設費用、および海外機関との共同研究であるため、打ち合わせのための海外出張旅費、国内協力者との打ち合わせのための国内旅費である。さらに研究成果発表用に国際学会参加費用と論文投稿料等に充てる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件)
Journal of the Meteorological Society of Japan
巻: 89 ページ: 283-290
Atmospheric Measurement Technics
巻: 4 ページ: 717-734
International Journal of Remote Sensing
巻: 32 ページ: 9033-9049