研究課題/領域番号 |
23710027
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
澤野 真治 独立行政法人森林総合研究所, 水土保全研究領域, 研究員 (50598729)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / データベース / モデル / 統計手法 |
研究概要 |
本研究では、統計的な手法を用いてモデル構造を簡略化していく客観的モデル簡略化手法を適用し、森林における水利用変動に影響を及ぼす要因の抽出を通じて、日本全域などの広域を対象とした森林の水利用を予測するモデルを作成することを目的とする。本年度は主にモデル構築や入力・検証用データの収集といったモデル構築のための環境整備を行った。収集したデータセットは、モデル入力用データとして農業環境技術研究所で作成されたアメダスメッシュ化データ及び森林理水試験地データベースの降水量データを、検証用データとして森林理水試験地データベースの流出量データ及び森林流域と見なすことができるダム流入量データである。森林の水循環を予測するモデルについて、Biome-BGC及びTOPMODELのそれぞれのソースコードを入手し、両者を統合化するための準備が整った。また、客観的モデル簡略化手法及びマルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション手法のアルゴリズムを理解するために、本研究で用いる客観的モデル簡略化手法の開発者である英国ノッティンガム大学Niel Crout教授の元を訪れ、手法の取得を行った。その際、手法の理解の為に既存の1年生草本の植物季節予測モデルにマルコフ連鎖モンテカルロシミュレーションアルゴリズムを導入して、得られたパラメータについて、既往の報告例との比較を行った。その結果パラメータセットについて良好な再現性が得られ、同時にパラメータ予測の不確実性についての情報も得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はデータやモデルのソースコードの収集、マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション手法の習得といった研究を進展させる上での必要となる環境整備に主に取り組んだ。そのため、研究の成果という点では目立つものは無かった。当初の計画では、本年度に森林の鉛直方向の水循環はBiome-BGC、土中の水循環はTOPMODELを用い、両者を統合して森林の水循環を予測するモデルを構築する目的であったが、現時点ではソースコードの入手及び両モデル間でやりとりをする変数の整理といったソースコードの理解を進めている段階である。モデル統合化という点では当初の計画よりやや遅れているものの、データ収集や客観的モデル簡略化手法の習得は進んでおり、全体としては当初の計画を概ね達成しており研究課題は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の主目的である森林の水利用を予測するモデルについて、1年目終了時点で2つのモデルの統合化が終了していない。また、統計的な手法による客観的なモデル簡略化方法のアルゴリズムの実装も未着手である。モデル統合化については、ソースコードは既に入手しているため、リンクする変数を整理し早急に統合化を進める。モデル簡略化手法の実装は、開発者であるNottingham大学のNiel Crout教授のもとへ直接出向き手法の詳細を聞き、実装する際に必要となる要件を伺うことで解決する予定である。まずは、森林の水利用変動に影響を及ぼす要因抽出の為のシステム作りを行い、モデルの統合が終了次第要因抽出の為のモデル計算に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用は主に、モデル簡略化手法の実装に関する打ち合わせのための渡英及び、モデル適用対象である独立行政法人森林総合研究所が管理する5カ所の森林理水試験地の現況把握の為の旅費として用いる。また、成果発表の為の学会参加や論文投稿のための英文校閲にも用いる予定である。
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