研究課題/領域番号 |
23710027
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
澤野 真治 独立行政法人森林総合研究所, 水土保全研究領域, 研究員 (50598729)
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キーワード | 森林生態系モデル / 水利用 / マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション |
研究概要 |
本研究では、統計的な手法を用いてモデル構造を簡略化していく客観的モデル簡略化手法を適用し、森林生態系における水利用の変動に影響を及ぼす要因の抽出を通じて、日本全域などの広域を対象とした森林生態系の水利用を予測するモデルを作成する事を目的とする。本年度は、森林の水循環を予測するモデルについて、森林生態系の水物質循環を予測するBiome-BGCと流域スケールの地表面及び地中の水移動を予測するTOPMODELの両者のソースコードレベルでの統合に取り組んだ。まず、ソースコードレベルでの統合に際し、2つのモデル間で共有する状態変数及び、相互に作用し合う状態変数の整理を行った。また、森林生態系の水利用を予測する上で重要となるモデル関数及びモデルパラメータを決定する貯めに必要となるマルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション手法のアルゴリズムを実装するための状態変数の整理とソースコードの設計を行った。実際のソースコードレベルでの統合作業は、Biome-BGCのソースコードが膨大な量であるため、当初予定していた作業工程より時間を要しているものの、森林生態系の水利用に関する部分のモデル関数群及び状態変数群について、コンピュータ言語の一つであるPythonへの変換作業をおおむね終了する事ができた。一方、TOPMODELについては、地中の水移動を表現する際に重要となる流域内の水流下方向を決める手法について、Seibert and McGlynn(2007, Water Resource Research)が提案した多方向流路網計算アルゴリズムの実装を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
客観的モデル簡略化手法を用いてモデルの簡略化を図る際に対象とする変数や関数を任意で選択できるようにするために、開発目的の異なる森林生態系モデルとTOPMODELのソースコードレベルでの統合が当初予定していた作業予定よりも時間を要しているため、統合されたモデルの試行まで至ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を遂行する上で最も鍵となるモデル統合及び客観的モデル簡略化手法の実装を本年度早い段階に終了させる。当初の計画では空間スケールの違いが森林生態系の水利用の及ぼす影響の評価も研究の対象となっていたが、まずは森林生態系が分布している気候帯の違いに重点を絞り、客観的モデル簡略化手法を通じた森林生態系の水利用特性の整理を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費の主な用途は、客観的モデル簡略化手法によるモデル簡略化結果の解釈の議論を行うために、客観的モデル簡略化手法の開発者であるNottingham大学Niel Crout教授を訪問する旅費、客観的モデル簡略化手法を通じた森林生態系の水利用特性の整理を行う対象となる森林理水試験地の現状視察のための旅費、及び学会参加等成果発表を行うための旅費を想定している。計算結果の保存のための外部記憶装置の購入を予定している。
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