研究概要 |
<1. 土壌炭素蓄積量の経年変化を把握する方法論の構築>森林からゴム林への転換に伴う土壌炭素蓄積量の経年変化を正しく評価するためには、土壌密度の経年変化を考慮する必要がある。そこで本研究ではまず、深度基準でサンプリングされた2時期の調査データを質量基準で比較できるよう補正する計算方法を新たに開発した。この方法を用いインドネシアで得た4年間のデータを使って検証したところ、従来法で土壌炭素蓄積量が変化なしとされた林地から有意な増加・減少トレンドを検出し、従来法における推定誤差を解消できることを示した。<2. カンボジア天然林の土壌炭素蓄積量の推定>ゴム林への転換前のベースラインの把握の為、カンボジアの熱帯モンスーン林下の18地点の土壌断面から得た土壌炭素蓄積量を常緑・落葉で比較し、さらにタイの27地点の土壌炭素蓄積データと比較した。以上の地域の土壌炭素蓄積量の層化パラメータとしては、第一に地質区分、続いて常緑・落葉区分が有効であると考えられた。深さ30 cmの土壌炭素蓄積量は、玄武岩地域で常緑、落葉林がそれぞれ71、58 Mg C ha-1で、堆積岩地域でそれぞれ39、24 Mg C ha-1であった。特に玄武岩地域のデータはタイの熱帯季節林域でも報告がなく、東南アジアの土壌炭素蓄積インベントリにおいて重要なデータと考えられる。<3. ゴム林調査の実施>カンボジアの玄武岩地域において, 森林伐採後に植栽した1, 2, 6, 9年生のゴム林に調査プロットを設置した。それぞれの調査プロットで5つの炭素プール(地上および地下部バイオマス, 枯死木, リター, 土壌)を推定した。バイオマス炭素と土壌炭素は付近の森林調査プロットのデータと比較した。ゴム林の土壌炭素蓄積量は森林よりやや小さく, 土壌炭素蓄積を規定する要因として粘土含量を検討した。
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