前年度までに、土壌炭素蓄積量の経年変化を適正に評価する計算手法を確立するとともに、土壌炭素プールの物理的組成を評価する比重分画法をカンボジアの天然林(8サイト)に適用した。本年度は、同手法をカンボジアの2地域の、林齢の異なるゴム林に適用した。2地域のうち1つは天然林からのゴム林転換地(施業1回目、4サイト)であり、もう1つは40年生を超えたゴム林の植え替え地(施業2回目、10サイト)である。現地調査についてはカンボジア森林局とゴム研究所の協力を得た。 天然林からのゴム林転換に伴い、深さ30 cmまでの土壌炭素蓄積量は10年以内に大きく減少し、60年生のゴム林で天然林の6割程度残った。同時期の土壌C:N比は急激な増加とその後の減少を示し、天然林由来の新鮮な有機物が急速に分解されたと考えられた。一方、40年超のゴム林の植え替えの前後では、土壌炭素の質的・量的変化は明瞭でなかった。 比重分画法により回収された土壌炭素画分の中で、主に細根の断片等から構成される軽画分炭素が全炭素に占める割合は、天然林サイトで4割程度であった。この割合は常緑・落葉の森林タイプ間で有意差がみられず、土壌中の軽画分炭素は全炭素から高い精度で推定された(R2 = 0.94)。一方ゴム林転換地では軽画分炭素の割合は1割程度に留まり、植え替え地でも同程度であった。このことから、天然林の土壌中に存在する比較的分解されやすい炭素プールは、その多くが森林の伐開とゴム林転換の初期ステージで消失すること、その一方で古いゴム林の植え替えが土壌炭素プールに与える影響は限定的であることが示唆された。
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