研究課題/領域番号 |
23710029
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
大島 長 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 研究官 (50590064)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エアロゾル / 大気化学 / 黒色炭素粒子 / 全球モデル / 物質輸送 / 除去過程 / 気象 / 大気環境 |
研究概要 |
本年度は、気象研究所の地球システムモデルを構成する全球大気大循環モデルに組み込むためのエアロゾルボックスモデルの開発を行ってきた。特に、エアロゾルの微物理過程と除去過程の計算手法の開発・改良を行った。また、開発したエアロゾルボックスモデルを用いて、全球大気大循環モデルで使用可能なブラックカーボン(黒色炭素粒子)の被覆状態の時間的変化を表現できる新しいパラメタリゼーションの開発を行った。この研究成果は現在学術論文としてまとめつつあり、欧州地球物理学連合の学会誌へ投稿準備中である。これらの研究と並行して、春季東アジア域において実施されたエアロゾル航空機観測により得られた結果を総合的にまとめることで、ブラックカーボンが大気中から除去される割合は、空気塊が輸送される途中に経験する降水量によって支配されることを定量的に明らかとした。また除去される割合は、降水量が多い中国南部域では大きく、降水量が少ない中国北部域では小さいことを明らかとした。同時に、これまでに開発を行ってきた領域三次元化学輸送モデルによる計算結果と沖縄県辺戸岬で観測されたブラックカーボン濃度の観測結果を用いて、東アジア域におけるブラックカーボン濃度の季節変動を明らかにするとともに、中国におけるブラックカーボンの排出源データの評価を行った。その結果、ブラックカーボンの排出源データは誤差40%程度の精度で再現できていることが分かった。エアロゾルの除去過程と排出源データは、それぞれ、現在のエアロゾル数値モデルにおける最大の不確定性要因の一つであるので、本研究により得られた成果は、今後の数値モデルの開発・モデル研究を行う上で非常に重要である。本年度はこれらの研究成果を学術論文としてまとめ、米国地球物理学会誌に三篇の論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、全球大気大循環モデルに組み込むためのエアロゾルボックスモデルの開発を行ってきたが、全球大気大循環モデルへの組み込み作業は継続中である。しかし、エアロゾルの微物理過程と除去過程の計算手法の開発・改良、ブラックカーボンの排出源データの評価、ブラックカーボンの被覆状態の時間的変化の新しいパラメタリゼーションの開発など、今後の全球エアロゾルモデルの開発・改良を行う上で必要不可欠な研究成果をあげることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度から行っている全球大気大循環・エアロゾル結合モデルの開発を継続する。開発する数値モデルを用いて、エアロゾルの時空間分布・放射特性を計算し、モデル結果を観測結果と比較する。航空機観測との比較では、モデルでブラックカーボンの時空間分布・放射特性を計算する際の不確定性の検証が実施される。地上・衛星観測との比較では、エアロゾルの広域的な空間分布・放射特性を決める過程の検証が実施される。このような観測結果に基づき、モデルの改良を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じた主な理由としては、計画当初に長期の参加を予定していたエアロゾル航空機観測が次年度に延期になり本年度に旅費を使用する機会がなくなったこと、計算機の購入金額が当初の予定額よりも安くなったこと等があげられる。今後の研究費の使用計画としては、全球モデルの計算結果のデータの保管には大容量のデータ保管装置が必要であるので、このために必要な設備備品費・消耗品費を計上する。また、国内外の研究者との詳細な討論や情報交換、及び国内外の学会にて研究成果を発表するための旅費を計上する。さらに研究成果を学術論文として発表する際に関連する費用も計上する。
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