研究課題
本年度は、昨年度に引き続き、全球大気大循環モデルに組み込むためのエアロゾルボックスモデルの開発・改良を行った。特にエアロゾルの微物理過程のうち、凝縮過程と凝集過程の計算手法の開発・改良を行った。また開発したエアロゾルボックスモデルを用いて、全球大気大循環モデルで使用可能なブラックカーボン(黒色炭素粒子)の混合状態の時間的変化について、本質を損なわず、かつ簡易的に表現できる新しいパラメタリゼーションの開発を行った。ブラックカーボンの混合状態の変化の表現は、数値モデルでエアロゾルの放射影響を評価する上で鍵となるので、本研究により得られた成果は、今後の数値モデルの開発・モデル研究を行う上で非常に重要である。本年度は、これらの研究成果を学術論文としてまとめ、欧州地球物理学連合の学会誌等へ掲載された。また本研究成果の一部を用いて、非静力学気象予測モデルに結合させるための大気化学反応過程・エアロゾル諸過程を取り扱うモジュールの開発・改良・検証を実施し、東アジア域における無機エアロゾル成分が大気質へ及ぼす影響評価を行った。これらの研究成果のとりまとめに貢献し、欧州地球物理学連合の学会誌に二篇の論文として掲載された。さらに並行して、これまでに開発を行ってきた領域三次元化学輸送モデルによる計算結果およびデータ解析手法と、春季東アジア域で実施されたエアロゾル航空機観測結果とを組み合わせて解析することで、雲過程を経たブラックカーボンの粒径分布の変化を明らかにするとともに、東シナ海上でエアロゾルが雲微物理に及ぼす影響について評価をした。エアロゾル・雲の相互作用は、現在のエアロゾル研究の最大の不確定性の一つであるので、本研究により得られた新しい知見は、今後のエアロゾル研究にとって非常に有意義である。これらの研究成果のとりまとめに貢献をし、米国地球物理学会誌に二篇の論文として掲載された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、エアロゾルの微物理過程の計算手法の開発・改良、全球モデルで使用可能なブラックカーボンの混合状態の時間的変化の新しいパラメタリゼーションの開発、雲過程を経たブラックカーボンの粒径分布の変化やエアロゾルが雲微物理に及ぼす影響についての新しい知見が得られるなど、今後の全球エアロゾルモデルの開発・改良を行う上で必要不可欠な研究成果をあげることが出来た。なお、全球大気大循環モデルに組み込むためのエアロゾルボックスモデルの開発、および全球大気大循環モデルへの組み込み作業は継続中である。
初年度から行っている全球大気大循環・エアロゾル結合モデルの開発を継続する。また、新たに開発したブラックカーボンの混合状態の時間的変化のパラメタリゼーションの導入も検討する。開発する数値モデルを用いて、ブラックカーボンの三次元的な空間分布・放射特性を計算し、モデル結果を観測結果と比較する。航空機観測との比較では、モデルでブラックカーボンの時空間分布・放射特性を計算する際の不確定性の検証を実施する。地上・衛星観測との比較では、エアロゾルの広域的な空間分布・放射特性を決める過程の検証を実施する。このような観測結果に基づき、モデルの改良を実施する。最終的に、本研究により得られる成果を学術論文としてまとめる。
前年度(平成23年度)に長期の参加を予定していたエアロゾル航空機観測が本年度に延期になり前年度の旅費を使用する機会がなくなったこと、計算機関連品の購入金額が当初の予定額よりも安くなったこと等により、次年度への繰り越しが生じた。今後の研究費の使用計画としては、数値モデル計算の実施、データの解析、および大容量のデータの保管には、計算機サーバおよびデータ保管装置が必要となることから、このために必要な設備備品費・消耗品費を計上する。また、国内外の研究者との詳細な討論や情報交換、及び国内外の学会にて研究成果を発表するための旅費を計上する。さらに研究成果を学術論文として発表する際に関連する費用も計上する。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)
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