研究課題
若手研究(B)
Manipal 大学、インド海洋研究所(NIO)、Patna 大学等との研究協力体制を確立し、現地研究者の協力の下、ヒマラヤ周辺より氷河融水とガンジス河流域の環境試料を収集した。また 2012 年 1 月および 7 月に、残留性汚染物質(POPs)や医薬品汚染なども含めた包括的な化学分析を行った。環境試料はガンジス川流域 8 地域から、水試料 30、底質 25の試料を採集し化学分析に供した。特に、新たな地球化学トレーサーである PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)関連物質と POPs 類等、水資源の地球環境動態解析に必要な環境分析化学・地球化学指標を JISK0450-70-10 および ISO25101 等に準じて測定した。検出感度は数pg/L であり、インドのようなベースライン汚染を調査する上で十分な高感度分析技術を開発した。ヒマラヤ氷河周辺から、PFOS は<0.01~0.73 ng/L、PFOA は<0.01~0.62 ng/L の濃度範囲で検出された。これは、日本、欧米のような先進国と比べ有意に低く、この地域には直接的な汚染源は存在しないことを示している。一方で、短鎖の化合物である PFBA や PFPeA などの濃度は標高 5000 m の氷河でも検出されており、これらの給源に興味が持たれる。また、氷河が流入しガンジスカワイルカが生息するガンジス川流域において、Delhi など都市域での顕著な濃度上昇が確認された(PFOS : 0.325~21.8 ng/L、PFOA : 0.098~2.46 ng/L)。インドの都市域での PFASs汚染組成は日本とインドでは大きく異なり、汚染源や汚染状況が異なることが推測されたが、その濃度レベルは日本に匹敵するレベルであり、これらの化学物質が食物連鎖を通してガンジスカワイルカに高濃度に蓄積され、固体数減少に関係している可能性も指摘できた。全体として、インドでの PFASs 類の使用量は現在急激に増加しており、ストックホルム条約によって国内生産使用が禁止された先進国とは大きく異なった状況が明らかになった。
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