研究課題/領域番号 |
23710034
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
石島 健太郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (90399494)
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キーワード | 一酸化二窒素 / 逆解析 / 先験値 / マルチエミッション計算 |
研究概要 |
大気中一酸化二窒素(N2O)は地球環境にとって非常に重要であるため、N2Oの全球循環の理解および収支解析を目的とした研究がここ数年非常に活発になってきた。昨年、大気化学輸送モデルによるN2O計算の相互比較を行う国際プロジェクトTransCom-N2Oが立ち上げられ、N2Oモデリングにおける様々な要素に対する共通理解が得られつつある。その中で、既存の生態系モデル等による陸域や海洋のN2O放出量変動の推定値が大気中のN2O変動をよく再現しないという問題がある。特に自然・人為放出源を含めた土壌からのN2O放出量の季節変動の位相が合わないというケースがある。そのようなN2O放出メカニズムに対する不理解を修正するためにインバースモデリング(逆解析)が行われる。逆解析ではフラックス先験値(prior-flux)を大気中濃度観測値を用いて修正するが、その結果はprior-fluxに影響されるという性質がある。そのため、prior-fluxができる限り現実的であり、その残りの僅かな真値との差を逆解析により修正するというのが理想である。しかしその逆解析において、N2Oのprior-fluxの真値からずれは、例えばCO2等のそれと比べて、上述したように、かなり大きいことが予想される。これは逆解析によるフラックス推定結果に含まれる人為的バイアスの大きな原因と成り得る。そのような問題を多少なりとも改善するために、本研究では複数のインベントリデータを用いたモデル計算を行い(マルチエミッション計算)、それら計算結果を用いて逆解析を行うことにより最適なprior-fluxの推定および実際のフラックス緯度分布の推定を行った。推定されたフラックス緯度分布は昨年度行った逆解析推定値と非常によく一致し、本手法の妥当性が証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初のN2O逆解析により既に全球N2O放出量変動の推定を行うことができた。加えて新たにマルチエミッション計算法を開発し、おおまかなフラックス推定とより現実的なフラックス先験値の導出方法を考案した。次年度は高解像度の全球N2O逆解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
我々のモデルによる地表への成層圏影響の計算パフォーマンスに関しては、まだ十分な検証が得られていない。それは逆解析によりN2Oフラックスの季節変動を十分な精度で推定する上でクリティカルな要素となる。これについてはCFCsの逆解析を用いて検証を行い、モデルにおいて成層圏影響の十分な再現性が得られない場合はそれらを不確定性として考慮し、逆解析に反映させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終結果の解析のためにワークステーションを購入予定である。 (Dell Precision T7600 ~99万円)
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