研究課題/領域番号 |
23710040
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
加藤 顕 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (70543437)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | レーザー / バイオマス / シミュレーション / スケール / リモートセンシング / InVEST / 森林 / 資源 |
研究概要 |
本研究の目的は、様々なスケールのデータを用いて、InVESTによるシミュレーションを行い、結果を比較し、使用するデータのスケールによる結果への影響を検討することである。InVESTとは、自然資源の将来予測をシミュレーションできるソフトであり、リモートセンシングデータから解析されたデータを初期値として使用することができる。これまでその初期値として扱うデータのスケールによる結果への影響を検討した研究は行われていない。 23年度はそのシミュレーションソフトに使用される様々なデータを準備した。まず、最も高解像度にデータが取得できる地上レーザーを用いて本研究対象地である山武市でデータを取得し、正確なシミュレーションに必要な材積量を自動で算出できるようにした。地上レーザーデータで取得した樹木は、倒木による実測との結果と比較し、正確性を実証することができた。その結果、地上レーザーだけで非破壊の材積量把握ができるようになった。 さらに、従来の材積式では考慮されていない現況、特に病害が及ぼす幹形状変化を地上レーザーで正確に把握することができ、伐倒調査により実測してその精度が十分にあることが検証できた。これまでのアロメトリー式では把握できない、溝腐れ病による病害度を考慮した炭素現存量を、正確にそして効率良く計測することができるようになった。地上レーザーデータの結果を航空機レーザーデータからの結果と比較したところ、航空機レーザーは樹冠表面からのレーザー反射が多いため樹高の計測には向いているが、森林の価値またはバイオマス量に深く関係している材積(幹の体積)を直接計測することができない。また樹冠が密な場所では航空機レーザーからのデータの取得する際、幹本数判別(立木密度判別)に限界がある。しかし、地上レーザーでは詳細に森林の垂直分布を把握できるため、森林資源量把握に適していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である最も詳細なスケールで地上レーザーを用いて資源量把握ができたことは大きな前進である。シミュレーションソフトを用いた研究では、何をグランドトゥルースとするかが問題となる。特にリモートセンシングデータからの解析結果を基にしている場合は、解析結果の正確性を検証しなければならない。その点で、本研究では地上レーザーにより最も正確な資源量を把握できたことが最初の大きなステップであり、このデータを基に、より広域での資源量を外挿していくことが可能となる。 これまでの現地調査での計測は、マニュアルによって行われていたため人的エラーが含まれ、完全なグランドトゥルースデータを取得するには限界があった。そこでレーザー等による高精度センサーが容易に利用可能となり、マニュアルによる測定よりもレーザーセンサーによる自動計測の方が正確となってきている。センサーの精度がそこまで良い計測ができると、グランドトゥルースとして手動で計測するのではなく、レーザーセンサーのみを用いて計測されたものを参照データとして使用できる。本年度の研究では、そのレーザーセンサーだけ用いて樹木計測をして、レーザーデータがグランドトゥルースとしても十分な精度があることを実証した。また、ここまで詳細なデータを用いてシミュレーションを行った研究はなく、新規性の高い研究になると言える。また、今後より広域なスケールでシミュレーションを行った結果を検証するために、地上レーザーによる結果で検証ができれば、現地データとして確証性の高いデータを提供できるようになる。本研究対象地は針葉樹林が主体であったため、次年度では広葉樹が主体の対象地でデータ取得を行い、解析手法をより汎用性の高いものにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまで取得したリモートセンシングデータからInVESTを用いてシミュレーションを行い、結果を比較することで、入力データのスケールによるシミュレーション結果への影響を検討する。これまで取得した低~高解像度リモートセンシングデータは、Landsat TM & ETM+ (解像度30 m)、ALOS PALSAR (解像度25m & 15m)、RapidEye (解像度 5 m)、航空機レーザー(解像度 0.5 m)、地上レーザー(3次元解像度 0.5 m)。これらすべてのデータを一つの対象地で取得済である。使用したセンサーは、光学からレーダー、レーザーと様々なリモートセンシングデータがあり、解析手法は異なる。光学センサーやレーダーセンサーは、輝度値や後方散乱係数を用いて土地利用図を作成し、その土地利用図がInVESTのインプットデータとして使用する際に影響を及ぼす。そこで、3次元計測が可能なレーザーデータを併用することで、土地利用図等の2次元平面としてのデータ利用ばかりでなく、3次元属性(バイオマス量等)を付加することで、より現実に近いシミュレーションが展開可能となる。 23年度で準備した様々なスケールのデータでシミュレーションの結果を比較検討し、スケールに関わるシミュレーションのアルゴリズムを調整する。例えば、シミュレーションのための目標シナリオ設定には、生物多様性等の指標があり、それらの指標をより増加させる空間的配置や初期値として入力データのスケールの影響を検討したい。InVESTはArcGIS上で動くソフトであるが、ArcGISが扱えるデータ容量には限界があり、高解像度の衛星画像または航空機レーザーデータを用いたシミュレーションには限界がある。そのため、容量の大きい入力データでも対応可能なシミュレーション手法の検討も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究では様々なスケールでシミュレーションを行い、結果を比較することが主な研究となるが、結果の検証のために現地データも取得しなければならない。物品費(10万円):調査に使用する消耗品の購入。旅費(85万円):本研究の研究成果を国際学会で発表するため3つの国際学会での発表を予定している。7月にドイツ・ミュンヘンで開催されるIEEE IGARSS、9月中旬にアメリカ オレゴンで開催されるForestSATとカナダ・バンクーバーで開催されるSilvilaser、これらリモートセンシングの国際学会で口頭発表を予定している。その旅費として70万円が必要である。また、国内対象地の交通費としてレンタカー代をガソリン代合わせて計15万円が必要である。人件費・謝金(15万円):夏に調査地で、宿泊を伴う調査を行わなければならなく、調査補助員に支払う人件費・謝金、またオフィスでデータ解析代としての人件費・謝金が必要であり、その合計を15万円が必要である。その他(60万円):昨年度に開発された手法の汎用性を高めるため、広葉樹林でデータを取得する必要があり、広葉樹での樹木バイオマス調査に地上レーザーデータを取得する。その取得代60万円が必要である。年間調査計画としては、平成24年4月 広葉樹での地上レーザーデータ取得。5~7月 シミュレーションによる結果解析。7月 IEEE IGARSS国際学会で成果発表。8~9月 現地調査。9月 ForestSATとSilvilaserの国際学会での成果発表。10月~平成25年1月 解析結果の論文発表とシミュレーションアルゴリズムを改善。2~3月 報告書まとめ。これらの研究計画で次年度は研究を遂行し、様々なスケールのリモートセンシングデータを用いたInVESTによるシミュレーションで、入力データのスケールが結果に及ぼす影響を次年度でまとめたい。
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