研究概要 |
本研究の目的は黄砂に付着したカビ成分(真菌:β-グルカン)のアレルギー増悪作用を明らかにするためである。 本実験では実際に黄砂から分離した真菌(ベルカンデラ(Bjer):β-グルカン含量:32.8ng/mg)を用いた。動物はBALB/c雌マウス140匹を用い、①対照群、②Bjer(0.2μg)と③Bjer(2μg)の単独群、360℃30分間加熱処理した④黄砂(H-ASD)10μg単独群、⑤スギ花粉抗原 (Cryj1:4μg)単独群、⑥Cryj1+Bjer 0.2μg群、⑦Cryj1+Bjer 2μg群、⑧Cryj1+H-ASD10μg群⑨Cryj1+Bjer0.2μg+H-ASD10μg群、⑩Cryj1+Bjer2μg+H-ASD10μg群の10群(1群14匹)とし、これらを2週間おきに3回点鼻投与し、その2週間後からCryj1を投与している群ではCryj1のみを4回点鼻投与し、最後の5回目には再びCryj1, Bjer, 或はH-ASDを混ぜた点鼻液を投与した。⑤Cryj1単独群の鼻洗浄液中の炎症細胞(好中球や好酸球)は対照群より増加し、⑦群では更に増加傾向を示した。しかし⑥, ⑧, ⑨, ⑩群ではCryj1単独群と同レベルであった。鼻洗浄液中の炎症性サイカイン・ケモカインもCryj1群では対照群より増加するもののBjer、H-ASDを混合した効果は見られなかった。鼻洗組織中のIL1β, IL-6, MCP-1とKCはCryj1+Bjer 0.2μg+H-ASD10μg群、Cryj1+Bjer2μg+H-ASD10μg群で著しく増加していた。病理組織学的にもこの2群は他群に比較して鼻粘膜上皮細胞の肥大、粘膜下の炎症細胞浸潤等アレルギー性鼻炎の病態が著しかった。 以上の結果から、スギ花粉+Bjer+黄砂の3者の曝露を受けるとアレルギー性鼻炎が著しく悪化することが明らかとなった。
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