平成23年度は、都市屋外環境の暑熱化に伴う熱中症リスクを推定できる数値メッシュ・モデルの開発に主に取り組んだ。この数値モデルは、流体気象モデル・建築エネルギー消費モデル・人体熱ストレスから構成される。数値シミュレーションの対象地域に東京と大阪を選択し、実街区パラメータ(平均建物高度や道路幅など)の設定によって都市部の熱ストレス分布を再現することができた。 平成24年度には、開発した数値計算システムによって熱中症リスクが評価できるよう、再現された熱ストレスの空間マップを実際の熱中症発生率などに変換することを試みた。ここでは、実際の熱中症患者データと熱ストレス指数(WBGT;湿球黒球温度)の相関分析をおこなうことで熱中症リスク関数を作成し、あてはめた。この手法によって、次の2種類の熱中症リスクの評価を検討した。(1)住民の熱中症リスク(静的熱中症リスク):各メッシュに居住する住民の昼間人口をもとに、熱中症リスクの分布を作成する。(2)移動者の熱中症リスク(動的熱中症リスク):メッシュ間を移動する人が、そのメッシュに位置したときの熱中症リスクの分布を作成する。したがって、前者では熱中症患者データの最小単位である区ごとに、また後者では年齢層ごとに熱中症リスク関数を作成し、それぞれで用いた。静的熱中症リスクはメッシュ内の昼間人口に対して1か月積算の患者数として、一方の動的熱中症リスクは対象地域全体における昼間人口1万人あたりの1か月の患者数として表すことができた。 以上の結果を関連学会で報告するとともに、海外の学術英文雑誌などへの投稿をおこない、研究成果の公表をおこなっている段階である。
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