研究課題/領域番号 |
23710052
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
奥島 真一郎 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20431653)
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キーワード | 環境政策 / 環境モラル / 価格インセンティブ / 地球温暖化 / エネルギー / 分解分析 / 環境と開発 |
研究概要 |
本研究の目的は、モラルモチベーションに基づく人々の自発的行動を政策分析可能な形でモデル化すること、加えて、独自に開発した要因分解手法等を用いて、環境モラルに基づく自発的行動を促進するような政策や価格インセンティブ政策の有効性を評価することである。平成24年度は、モラルモチベーションに基づく人々の自発的行動のモデル化及び分析を中心に行い、主に以下のような成果を得た。 第一に、Roemer(2010)、Brekke et al. (2003)等を参考に、包括的評価関数を用いて、カント的道徳に則したモラルモチベーションの存在を考慮したモデルを構築し、分析を行った。すなわち、本モデルにおいては、いわゆる定言命法的な考えに基づいて行動しようとする個人を想定し、標準的な経済人モデルによる結果との差異について分析した。まず、共有地経済における稀少資源の乱獲消費問題について、人々が前述のようなモラルモチベーションに基づいて行動する場合には、「共有地の悲劇」問題は改善することが示された。また、協同的生産経済における平等主義的分配ルールについても、人々がカント的道徳に基づいて行動する場合には、過少生産の問題は改善することが示された。結果から、人々がカント道徳的なモラルモチベーションを持つ場合、共有地経済や非成果主義的報酬体系等の経済メカニズムにおいて、これまで想定していたよりも効率的な資源配分が可能であることが示された。 第二に、東日本大震災後のエネルギー価格上昇に伴い懸念される「エネルギー貧困」問題について、現状分析とシミュレーション分析を行った。この研究では、特に、社会福祉料金制度の有効性について定量的に考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、主に、モラルモチベーションに基づく人々の自発的行動のモデル化及び分析を進める予定であった。この点に関しては、概ね予定通りであり、学術雑誌に成果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに得られた成果を基にして、今後、厚生分析、また、実証分析を進めていく予定である。加えて、東日本大震災後のエネルギー問題についても、省エネルギー、エネルギー貧困の観点から、今後考察を進めていく予定である。 以上より得られた成果を、国内外の学会、学術論文等で適宜発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費については、経済学、環境学関連の研究資料、データ類、研究打合わせや学会発表のための旅費、資料収集、整理のための謝金、外国語論文の校閲などに使用する予定である。物品費等が当初見込みよりも少なかったために発生した繰越金については、国際学会発表のための旅費等に充てる予定である。
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