本研究課題では、1)各種交通システムについて条件別にCO2排出量原単位の整備、2)事業者向けの詳細な情報提示方法「交通エコレポート」の提案、3)消費者向けの分かりやすい情報提示方法「交通カーボンフットプリント」の提案、を目的としている。 平成24年度は、平成23年度に整備した鉄道・バス・航空機のCO2排出量原単位を用いて、交通を利用したサービスの典型例であるパッケージツアーを対象に、i)事業者向けのCO2排出量評価方法、ii)消費者向けの分かりやすいカーボンフットプリント提示方法、を提案した。 i)については、特に「移動」のCO2排出量原単位について詳細に検討し、a)鉄道のCO2排出量原単位:地方・非電化鉄道については全国平均値は使用してはいけない、b)貸切バスのCO2排出量原単位:1人あたりのCO2排出量は乗車人数に依存するためツアーへの参加人数の把握が不可欠である、c)航空のCO2排出量原単位:運航距離が長くなるほど飛行距離あたりのCO2排出量は低減する、ことを示唆した。 ii)については、国内ツアー(名古屋~信州)・海外ツアー(日本~カナダ)をケーススタディとして、CO2排出量の具体的な算定例とカーボンフットプリントが表示されたパンフレット例を示した。これらの事例を通して、a)移動手段の変更によりCO2削減が可能、b)観光内容を変更せずにCO2削減を目指すツアーの提供が可能、であることが明らかとなり、消費者に対してCO2排出量の少ないツアーを分かりやすく提示する方法が提案できた。 以上、一連の研究成果は日本LCA学会ニューツーリズム研究会により発行された「中間報告書」に掲載され、学会関係者を中心に広く公開されている。また、研究論文として発表した「パッケージツアーへのカーボンフットプリント付与の方法論」には平成24年度土木学会・地球環境論文賞が授与された。
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