研究課題/領域番号 |
23710058
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
阿部 新 山口大学, 教育学部, 准教授 (30436745)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中古品 / 廃棄物 / 自動車 / 貿易 / 外部性 / 静脈産業 / 国際情報交流:ロシア |
研究概要 |
本研究の目的は、中古品の廃棄後の回収または処理に関して、輸出国の責任および費用負担を検討することにある。平成23年度は、研究実施計画に従って、中古品の越境移動に関する理論分析に向けた研究サーベイを行い、国境を越える場合においても外部性を考慮した税・補助金政策が現実的に妥当ではないことを示した。また、余剰分析により、中古品の輸出制限が国内の余剰を小さくすることが示された。これらは関連する学会にて報告され、学内紀要にてまとめられた。上記の結果から、中古品の越境移動に関する政策論として、(a)バーゼル条約との違い、(b)国内制度における役割との違い、(c)新品ユーザーの負担、(d)拡大生産者責任の議論と越境問題といった論点が得られた。これは本研究の目的である責任や費用負担の議論のベースとなる意義のある作業となった。このうち、国境を越える生産者責任をどう進めていくかについての整理は既に進めており、平成23年度中にワークショップにて報告された。一方、実態調査においても、研究実施計画に従って、国境を越える中古車の廃棄地の調査を行い、中古車輸入国の特徴を導き出した。この結果、静脈プロセスが国境を越えることでリサイクルが国際分業化しており、それにより産業の形成が異なってくるという重要な指摘をすることができた。この特徴を考慮した静脈産業の類型化は次年度に向けた課題となった。その他研究実施計画に記載された内容として中古車貿易の制度の整理があるが、これに関しては、いくつかの国の実際の政策と流通量の変化を分析し、政策転換の影響の大きさを指摘することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中古品の輸出国の政策としての税・補助金政策の非現実性、輸出国が輸出制限をするインセンティブのなさを指摘することができ、それをベースとして生産者責任等のさらなる議論に進展できると考えられるため。また、静脈産業の形成に関しても、単なるモータリゼーションの進展度の違いではなく、国際分業的な視点が重要であり、それを考慮したモデル分析の必要性を認識することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、中古品の廃棄後の回収または処理に関して、輸出国の責任および費用負担を検討することにある。平成23年度の成果を踏まえて、今後は、まず、国境を越える生産者責任に関する方向性を提示し、国境を越える汚染問題における費用負担論等を参考にし、議論を進めていく。次に、国境を越えた静脈プロセスおよび産業の形成の違いを考慮した類型化作業およびモデルの組み立てを行う。これらをベースとして、輸出国の責任および費用負担の議論を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用計画に基づいて使用していく。物品費ではコンピュータ購入に当てる。また、海外旅費では、国境を越えた静脈プロセスの実態調査に用いる。国内旅費では、国内での学会や研究会での発表に用いる。なお、実態分析において貿易量の集計が求められるが、23年度は十分に行えず、データの購入は見合わせた。この未使用額については24年度中に使用していく。
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