研究課題/領域番号 |
23710058
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
阿部 新 山口大学, 教育学部, 准教授 (30436745)
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キーワード | 中古品 / 廃棄物 / 拡大生産者責任 / 国際資源循環 / 自動車 / 海外展開 / 静脈産業 |
研究概要 |
前年度において国境を越える場合においても外部性を考慮した税・補助金政策が現実的ではないことが示されたが,平成24年度ではこれを受けて,生産者の費用負担(国境を越える拡大生産者責任の適用)の可能性について検討した。拡大生産者責任の根拠論はいくつかあるが,自国内で発生する外部費用を想定し,それを含めた国内の余剰の最大化を根拠とする考え方が強い。この根拠であれば,輸出先で発生する外部費用の問題に対して輸出国は関係がなく,制度としての拡大生産者責任は国内で完結することになる。排出者責任,占有者責任の考え方とは異なり,拡大生産者責任は限られた国で限られた物品でしか適用されておらず,国境を越える拡大生産者責任も現状は適用されにくいという結論となる。この成果はディスカッションペーパーにまとめられ,次年度にさらに議論していく。なお,これに関連して2000年代の日本の廃棄物・リサイクル政策の国際化の動きについて,大学紀要にまとめた。一方,このような中で,実態の動きとして静脈産業の海外展開の動きが観察された。実態調査において,自然に生成された自動車静脈産業の海外展開のインセンティブについて聞き取り調査を行い,類型化を行った。これにより,循環資源の販売拠点としての海外展開が主流であることがわかったが,一部で環境問題の観点から,社会的責任として循環資源を回収する企業の存在もあった。この成果は学会にて発表され,次年度さらに議論を深める予定である。その他,自国内でプールするリサイクル料金の輸出先での利用を想定し,国家間の環境基金(輸出国使用者の費用負担)の適用の可能性も検討したが,汚染除去のための基金であり,状況が異なることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国境を越えた拡大生産者責任は,拡大生産者責任そのものの考え方を変えない限り,適用することが難しいことがわかり,中古品の輸出後の廃棄物問題について,どうすべきかという議論の方向性が見えてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
23年度,24年度に行った中古品輸出国のインセンティブ問題や拡大生産者責任の内容をより詳細に検討し,その含意を元に,学会,研究会にてディスカッションを重ね,輸出国の責任や費用負担の方向性を示す。静脈産業の海外展開について(動脈側で議論されてきた)産業論を適用するなど学術的な位置づけを行い,同様に学会,研究会にてディスカッションを重ねる。さらに,一部輸入国で新たな制度が導入されており,限られた予算の範囲内でその実態をフォローしておく。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用計画に基づいて,学会,研究会での発表経費や論文投稿料を中心として使用していく。24年度は政策研究が中心であったこともあり,実態調査のための旅費の使用が十分ではなかった。予算の範囲内で25年度において実態の変化をフォローするための調査費用に当てる。
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