研究課題/領域番号 |
23710059
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山中 亮一 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (50361879)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 尼崎運河 / 水質浄化 / 富栄養化 / 生態系工学 / 汽水域 / ベストミックス / 市民協働 / 物質循環 |
研究概要 |
a)「水質改善技術の確立」に関する研究.(1)付着性二枚貝を用いた浄化技術開発では,優占二枚貝コウロエンカワヒバリガイを効率的に捕集することを目的に,付着基盤を現地に沈設し,付着状況の観察と湿重量計測を行った.この結果を基に,付着しやすい基盤形状について考察し,平成24年度より考案した新たな形状の基盤を沈設することとした.(2)藻類による水質浄化技術開発では,夜間でも藻類による水質浄化を促すことを目的に,LED照明の適用を検討した.現地にて夜間における照射実験を複数回実施し,チャンバー実験および流下状態での生産機能についての計測を実施した.さらに室内実験では,水温と光量子量をパラメータとし基礎生産量の計測を行い,季節ごとの効果と最適光量を明らかにした.この成果については,国内講演会2編および海岸工学論文集に1編を投稿した.(3)ヨシによる浄化技術開発については,現地住民との協働でのヨシの移植を協議したが,地元産のヨシを用いることに対する要望があり,種子の採取等を検討するにとどまった.また,これまでに実施した関連する研究について,海外講演会1編と国内論文1編で公表した.b)「水質改善活動の継続性」に関する研究.尼崎運河周辺の小学校4校への環境学習を実施するともに,地元中学校との協働での海藻の取り上げ活動を行い,その効果を定量化した.さらに,平成24年3月22日に開催された水質浄化施設オープニング・セレモニーにて,講演を行い,これに合わせてアンケート調査を行った.また,10月8日に開催された運河博覧会(うんぱく)においても,アンケート調査を行った.これらの集計は次年度の課題であるが,概ね,尼崎運河再生の動機として「加害者意識」があることが伺える結果であった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請の目標は,沿岸域の環境再生の課題を克服するために,市民が主体的に水質改善に関わることができる水質改善システムの構築である.研究内容は二つある.ひとつめのa)水質改善技術の確立については,さらに3つの小項目に分かれているが,二枚貝を用いた技術と海藻を用いた技術開発については,現地実験を十分に行い,順調に進んでいる.ヨシを用いた技術については,市民協働型としたため,今後のすすめていく. ふたつめの課題であるb)水質改善活動の継続性については,兵庫県による水質浄化施設が無事に竣工し,運営組織の立ち上げ,活動の広報など下地作りを順調に行なっている.水質浄化研究の取り組みは,神戸新聞の記事として2回取り上げられた.今後は,水質改善活動に協働で取り組みながら,その波及効果や,認知度の向上,障害となる要素などについて,他地域での事例と比較しながら,検討を進めることになる.
|
今後の研究の推進方策 |
a)「水質改善技術の確立」に関する研究ついては,二枚貝による物質変換機能の定量化,海藻による栄養塩除去水路の性能向上を検討するための数値モデル作製,LED照明利用の検討の継続,ヨシ植栽の市民活動化とその効果の定量化を目標とする.また水質浄化施設の水質浄化機能のモニタリングを行い,数値モデルの精度確認を行う.b)「水質改善活動の継続性」に関する研究については,市民活動を本格化し,海藻の回収と堆肥化を行い,参加者へのアンケート調査等を実施し,市民による水質浄化活動により市民が得るものを明らかする.また堆肥の安全性評価を行う.特に重金属類の動態に着目する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画として,a)「水質改善技術の確立」に関する研究では,水質浄化機能の定量化用として水質分析用の薬品,波長帯を制限したLEDパネル,堆肥に含有される重金属類分析のための消耗品等を購入する.また,調査,学会発表のための旅費を使用する.旅行回数は,調査は毎月1回,学会は国内2回を予定しており,すべて同行者が4名いる.b)「水質改善活動の継続性」に関する研究については,物品ではアンケート分析用ソフトウエアを購入する.また活動のため旅費を使用する.頻度は毎月1回で,同行者は4名である.繰越額については,平成23年度内に執行は済んでおり,平成24年4月に支払予定となっている.
|