研究課題
最終年度は、本研究の最終目的のひとつである、尼崎運河水質浄化施設を構成する3種の生物浄化技術を組み合わせた際の浄化能の定量化を重点的に行い、定量化することができた。特に付着性二枚貝による懸濁物除去水槽については、モデル式の構築を含む詳細な検討を行い学術論文として発表した。また、付着性二枚貝の摂餌機能を制限する要因とその数理的な表現に関係する生態的現象を精査し、国際会議で発表した。本浄化施設は竣工から1年が経過し、設計時に行った実証実験で発現した浄化機能とは異なる状況が認められた。特に、栄養回収水路での藻類の発育状況に違いがみられたため、今年度は研究計画にこの解明を加え、藻類の生態に関係するすべての環境要因を精査し、原因を特定した。具体的には、運河側の赤潮発生にともなう溶存態栄養塩の低下、猛暑にともなう底層水質の悪化、とくにアンモニア態窒素の上昇による量子収率の低下であった。また、自然状態で経過観察をした人工干潟は、水深によって出現生物が異なったが、その生態系評価により有機物が干潟に堆積し続ける系であることが明らかとなったため、有機物堆積した砂を陸域で活用する方法を提案し、実験で実現性を確かめた。本研究では地域での水質浄化活動の主体性を高めることを研究課題のひとつとしており、そのひとつの手段として、小学生向けの学習会を通じ、児童から親世代への環境意識の波及性を検討した。その結果、児童から環境学習会の話を聞いた保護者の4割が、浄化活動への意識が向上し、クロス集計により尼崎運河に悪い印象をもともと持っていなかった人にこのような変化が生じやすいことが示された。また、尼崎運河に関する情報源として、主として全戸配布の市の広報が挙げられており、行政からの情報発信が有効であることが分かった。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻: Vol.69, No.2 ページ: 1086-1090
10.2208/kaigan.69.I_1086
Proceedings of the Global Congress on ICM: Lessons Learned to Address New Challenges (Proceedings of EMECS10 - MEDCOAST 2013 Joint conference),
巻: Vol.2 ページ: 1014-1021
日本沿岸域学会研究討論会2013講演概要集
巻: 26 ページ: -
LED総合フォーラム2013in徳島論文集
巻: 1 ページ: 97-98