持続可能な社会の構築に向けた意思決定のためには、その環境への影響のみならず、社会・経済への影響をあわせて考慮する必要がある。ライフサイクルアセスメント(LCA)はk環境影響を定量的に評価するツールであるが、社会・経済影響を評価する枠組みは発展途上である。そこで、食料・農業分野を対象として、製品・サービスの環境・社会・経済への影響を評価するための分析枠組みを検討した。そのために、研究期間を通じて以下の研究を実施した。 1.日本の米作を対象として、水田からの温室効果ガス(GHG)に対する水管理や有機物管理の影響を考慮したLCAを実施した。栽培工程の違いにより、水田からの直接的なGHG排出および、投入資材の製造による間接的なGHG排出に与える効果を検証するとともに、生産コストの比較を行った。また、上記の比較的詳細なLCAを実施する際のデータ入手可能性について検討した。2.コメの主要な輸出国のひとつであるタイを対象として、有機稲作および慣行稲作の環境負荷と生産コスト、地域経済への影響について、LCAによる比較分析を行った。また、LCAに必要なデータの利用可能性を調査した。3.食料生産による自給率向上が社会・経済に与える影響の分析枠組みを検討した。4.わが国における食料生産・消費および関連する有機資源に関わる物質フローのデータ整備と分析を行い、環境・社会・経済影響をマクロレベルで評価するための基礎データを整備した。 上記の研究により、経済・社会影響におけるいくつかの重要な項目の評価手法と、国内外での適用可能性について一定の知見を得ることができた。
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