研究課題
2Gy/日のX線を30日以上照射し続けても増殖する臨床的放射線耐性細胞とその親株を用いて、X線で誘発される細胞死について解析した。親株であるHepG2とそのCRR 細胞株であるHepG2-8960-Rに10 GyのX線を1回照射し、経日的に倒立顕微鏡下に形態変化を観察した。HepG2では、照射3日目で死細胞はほとんど観察されなかったが分裂像の増加が見られた。引き続き培養液中に浮遊してくる死細胞の顕著な増加が見られた。さらに照射後7日目になると、接着している生細胞に、多核に特徴づけられるmitotic catastropheを示す細胞が増加した。HepG2-8960-RではHepG2と比べて、照射後3日目に分裂像の増加はみられず、さらに照射後5日目においても死細胞の顕著な増加は見られなかった。しかし、照射後7日目になるとHepG2と同様にmitotic catastropheを誘発した多核の細胞が生じたが、その誘発頻度はHepG2と比べて低かった。また、オートファジーの誘導は親株では誘発されるものの、放射線耐性細胞では誘発されなかった。10GyのX線照射後、経日的に細胞内のROSを検出すると親株ではROSの産生量の増加が見られたが、放射線耐性細胞ではそのような傾向は見られなかった。そこで、細胞内ROSの産生場所であるミトコンドリアを解析することにした。細胞当たりのミトコンドリアDNA量を解析すると、予想に反して放射線耐性細胞及びその親株で特に差は見られなかった。今後は、ミトコンドリア電子伝達系の阻害剤を用いた解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度科学研究費助成事業交付申請書に記載した、「CRR細胞に交叉耐性を示す抗がん剤のスクリーニング」、「H2O2感受性の定量化」、「CRR細胞でのX線照射で生じたROSのイメージング」、「H2O2耐性細胞の樹立」は、計画通り終了したため。
平成23年度は、研究実施計画通り遂行できた。平成24年度においても、研究実施計画通り遂行する予定である。
計画の変更を伴わない。次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成23年度請求額と合わせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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http://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/path/