研究課題
放射線の子宮内被曝は精神遅滞を伴う重度小頭症を誘発することが動物実験や原爆被爆者の疫学調査から明らかになっている。しかし、小頭症発症の分子、細胞レベルでの発症機構は不明な点が多い。本研究では、遺伝性小頭症の原因遺伝子探索とその機能解析を行い、小頭症発症の分子病理機構の解明を研究目的としている。最終年度は、小頭症患者2名(同胞例)とその両親のエクソーム解析を行った。劣性遺伝形式を示す新規SNPの抽出を行い、原因変異の絞り込みを試みた。しかし、原因変異の候補となる新規SNPは検出されず、既知の小頭症原因遺伝子53遺伝子のエクソンおよびエクソンーイントロン境界部にも変異は検出されなかった。これらのことから、原因変異はエクソン外領域に存在することが示唆され、全ゲノム塩基配列決定による変異探索を要することが考えられた。また、ゲノム安定性維持を担う分裂期チェックポイントの主要分子であるBUBR1の先天的欠損症である染色分体早期解離(PCS)症候群は、高発癌性だけでなく精神遅滞を伴う重度小頭症も高頻度に合併する。日本人PCS症候群患者では、片アリル性にBUBR1遺伝子のエクソン内に変異を検出するが、もう一方のアリルにはBUBR1遺伝子発現低下に強く相関する0.2Mbのハプロタイプを認めるがエクソン内変異は検出されない。次世代シークエンサーを用いて本ハプロタイプの全塩基配列を決定して、BUBR1遺伝子の転写開始点上流44kbに本疾患に関連する新規SNPを同定した。独自に開発した人工ヌクレアーゼTALENを用いた一塩基編集技術を用いて、本SNPをヒト正常細胞にノックインしたところ、BUBR1遺伝子発現の低下と本疾患を特徴づける染色体不安定性を示したことから、新規SNPがPCS症候群発症の遺伝子外変異であると結論づけた。本研究成果はPNAS誌に掲載され、掲載号の注目論文として取り上げられた。
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