放射線被ばくにより有意に乳がんリスクが高まることが原爆被爆者の疫学調査により明らかにされている。申請者はこれまで,ラットを用いた放射線誘発乳がんにおいて有意に変化しているマイクロRNA(miRNA)を見出している。本研究では放射線とmiRNA発現変動の意味を乳がん細胞・がん幹細胞・血清といったレベルで明らかとすることを目的としている。 ラット放射線誘発乳がんで発現変動が見られたmiRNAの細胞増殖等の機能解析を行ったところ,MCF-7に加え、T47Dヒト乳がん細胞株においてmiR-194を抑制することにより,細胞増殖が阻害された。 乳がん幹細胞は乳がん細胞株を特定の条件で培養すると、非接着の細胞塊として得られる細胞集団に高率に含まれることが知られている。このようにして得られた細胞におけるmiRNAの発現量を定量PCRにて検討した結果、miR-22がmammosphereに含まれる細胞に多く発現していることが明らかとなった。また、この細胞は放射線被ばくに対し、抵抗性を示すと言われているが、様々な細胞株で検討した結果、細胞株やその状態により異なる応答性を示すことが示唆された。 放射線被ばくし乳がんが生じたラットから得られた血清からmiRNAを抽出し、miRNA発現量の検討を行ったところ、miR-194が放射線被ばくして乳がんができたラット血清に有意に多く含まれる結果が得られたが、検討数を増やしたところ、放射線被ばくとの関連性は低いという結論に至った。 miR-22に関して乳がん細胞株でその発現量を調節したところ、mammosphere形成効率に変化が見られたことから、幹細胞にとって重要なmiRNAであることが示唆された。また、miR-22は一部の乳がん細胞株における生存率を修飾する効果があることが示唆された。
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