研究概要 |
昨年度までに得られた知見をもとに、ゲル母材に用いる多糖類の種類や濃度、放射線検出液中のモノマーの種類や組成比を選定し、ポリマーゲル線量計材料を作製した。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の20 wt%水溶液(ペースト状サンプル)を厚さ1 mmに成膜後、電子線を10 kGy照射することで、ゲル母材を調製した。次いで、洗浄・乾燥したHPCゲルを放射線検出液(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライドをそれぞれ2, 3, 0.16 wt%含む水溶液)に含浸し、膨潤したゲル膜をPE-ナイロン袋に入れ脱気密封包装することで、ポリマーゲル線量計を得た。 作製したポリマーゲル線量計は、コバルト60線源からのγ線に対して、わずか1 Gyの線量でも白濁を視認できた。紫外可視分光光度計を用いた吸光度測定から白濁度合いを評価した結果、白濁度合いは、1 Gyから10 Gyまでの線量範囲でほぼ直線的に増加した。さらに、作製したポリマーゲル線量計に対して、筑波大学の治療用LINACを用いてX線照射を行い、放射線治療環境下での性能を評価した結果、γ線照射と同様に白濁を視認でき、その白濁領域が治療計画の照射領域とほぼ一致することを確認できた。 また、本研究成果について、学会や論文等で積極的に発表し、日本医学物理学会学術大会で優秀研究賞を受賞した。
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