研究課題/領域番号 |
23710074
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
今岡 達彦 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, チームリーダー (40356134)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放射線発がん / 起源細胞 / 乳がん |
研究概要 |
乳腺は放射線発がんリスクが高い組織の一つであるが、放射線単回照射によるラット乳がん誘発モデルを用いた研究代表者らの研究等から、放射線誘発乳がんの起源となる細胞種は自然発生乳がんのそれとまったく同一ではないと予想されている。一方ヒト及びマウスの研究で、乳がんの起源細胞は腫瘍のサブタイプに反映するというモデルが提示されている。そこで本研究では、ラット乳がんのサブタイプ判定法を構築し、これによって放射線単回照射誘発乳がんの特徴を明らかにするとともに、ラット乳腺の未分化段階の細胞を濃縮する方法を開発し、放射線誘発ラット乳がんの起源細胞を推定することを目的とした。動物実験は所属機関の動物実験委員会において承認された計画に従って実施した。 本年度は、ヒト乳がんにおいてサブタイプ判定に有用な免疫組織化学的マーカーのうちエストロゲン受容体α及びプロゲステロン受容体が大多数のラット乳がんにおいて発現していることを確認した。またTibshiraniら(2002)の報告しているマイクロアレイデータの分類アルゴリズムにより、Sorlieら(2003)の公開データ及び研究代表者が解析したラット乳がんデータを用いて、サブタイプ判定法の予備的検証を行った。さらにラット乳腺よりアノイキス耐性細胞を培養し、これが分化した乳腺細胞の特徴を持たないことを確認した。表面抗原を利用した未分化細胞濃縮については、本研究開始後に同趣旨の報告(Sharmaら、2011)が公表されたため着手前に当該文献を検討した結果、予定していた手法ではラット乳腺未分化細胞は必ずしも濃縮できないと考えられた。 以上のように初年度である本年度は、ラット乳がんのサブタイプ判定に必要な手法の開発を開始ならびに基礎的情報の一部を取得するとともに、未分化乳腺細胞を用いた実験系の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画である、エストロゲン受容体α及びプロゲステロン受容体の発現調査、分類アルゴリズムの導入と公共データの検証、アノイキス耐性細胞実験の開始、表面抗原による細胞濃縮の検討をすべて達成した。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初予定通りに推進する。すなわち来年度は、他の免疫組織化学的マーカーの発現調査と分類アルゴリズムのラット乳がんへの適用可能性の検証を終え、自然発生乳がん及び成体期の照射により誘発された乳がんの解析を開始する。未分化細胞濃縮については、表面抗原を用いる方法の困難性が予想されたことから、アノイキス耐性を優先して再生能検定に着手する。最終年度は、自然発生乳がん及び成体期照射誘発乳がんのサブタイプを解析し終え、多様な実験プロトコルによって放射線で誘発したラット乳がん(高LET放射線、幼若期等)についてもサブタイプを解析する。また、未分化細胞を個体に移植し、研究期間内に乳がんの発生が確認できた場合は、そのサブタイプを解析して、これらの結果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
非該当
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