研究課題
乳腺は放射線発がんリスクが高い組織の一つであるが、放射線単回照射によるラット乳がん誘発モデルを用いた研究代表者らの研究等から、放射線誘発乳がんの起源となる細胞種は自然発生乳がんのそれとまったく同一ではないと予想されている。一方ヒト及びマウスの研究で、乳がんの起源細胞は腫瘍のサブタイプに反映するというモデルが提示されている。そこで本研究では、ラット乳がんのサブタイプ判定法を構築し、これによって放射線単回照射誘発乳がんの特徴を明らかにするとともに、ラット乳腺の未分化段階の細胞を濃縮する方法を開発し、放射線誘発ラット乳がんの起源細胞を推定することを目的とした。動物実験は所属機関の動物実験委員会において承認された計画に従って実施した。本年度は、ヒト乳がんにおいてサブタイプ判定に有用な免疫組織化学的マーカーのうち、サイトケラチン5(CK5)、上皮成長因子受容体2(ERBB2)、p63がラット乳がん標本の一部で発現していることを確認した。また、Benitoら(2004)のアルゴリズムを用いてヒト及びラットのマイクロアレイデータ間の組織的バイアスを除去した後にTibshiraniら(2002)の分類アルゴリズムによってサブタイプを判定する方法を検証し、バイアス除去の有無によって分類結果に変動があることを確認した。免疫組織化学的マーカー(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び上記の3つ)を使用したサブタイプ解析として、ラットに自然発生した乳がんと、成体期ラットにγ線照射した後に発生した乳がん検体について、免疫染色を開始した。アノイキス耐性によって濃縮した未分化細胞の再生能検定の条件検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画である、免疫組織化学的マーカー(CK5、ERBB2等)の発現調査、サブタイプ判定アルゴリズムのラットデータへの応用可能性の検証、サブタイプ解析及び濃縮細胞の再生能検定の開始のすべてを達成した。
来年度は、自然発生乳がん及び成体期照射誘発乳がんのサブタイプを解析し終え、幼若期の放射線照射によって誘発したラット乳がんについてもサブタイプを解析する。また、アノイキス耐性によって濃縮した未分化細胞を個体に移植する。現時点では、どれだけの濃縮細胞を移植すると移植部位に生着するかという情報が不足しているため、来年度内には、移植部位における組織再生の定量的解析によってアノイキス耐性細胞の再生能を検定する。
該当なし。
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