研究課題/領域番号 |
23710080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
劉 暁輝 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (60596849)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 有害化学物質 / 蛋白質 / 脳・神経 / 生理活性 / ビスフェノールA |
研究概要 |
内分泌撹乱作用は、化学物質の核内受容体を介したシグナル毒性である。したがって、核内受容体に対する化学物質の結合を測定することは不可欠な研究であり、活性の指標となる標準化合物は必須な分子ツールである。しかし、ヒト核内受容体48種類のうち、化学物質の結合性に関する研究が進展しているのは約半数に過ぎず、残りは天然リガンドさえ発見されていない。本研究の目的は、リガンド未知の「オーファン核内受容体」に強く結合する化学物質を探索する目的とし、表面プラズモン共鳴を利用した分子間相互作用解析装置を用いて分子量150~500の低分子量化学物質の核内受容体結合親和性について解析し、そして、標準化合物となり得る高親和化合物を同定する。2年計画の1年目である本年度は、試験化学物質として、合計約500種の試験化学物質を選定した。次に、20種類オーファン核内受容体のうち、10種について受容体タンパク質をGSTと融合させて発現・精製した。次いで、ビアコアを用いた結合試験系を構築した。そして、4種類の核内受容体については、結合する化学物質の同定に成功した。これらは、これまでに全く知られていない化合物群であり、初めて結合性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度では、まず、試験化学物質の選定、及び試験溶液の調製法の確立に成就した。さらに、試験系確立のための最も重要な要素の一つである高純度な(95%以上)の受容体タンパク質の調製法にも成就した。また、実際にビアコアを用いた受容体-化学物質相互作用試験から、これまで未同定であった化学物質の同定に成功した。しかも、4種類もの核内受容体について、結合する化学物質同定に成功した。このように、研究は予想以上に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、引き続いて、残りのオーファン核内受容体のタンパク質の発現系の構築を完了し、高純度なタンパク質を大量に精製する。そして、これらの受容体について、ビアコアを用いた結合試験系を確立し、結合化学物質探索のアッセイを遂行する。23年度に結合化学物質が未同定の核内受容体についても引き続き探索を続ける。これらに並行して、結合化学物質が同定済の核内受容体について、トリチウム標識体を用いて化学物質のスクリーニングを実施する。さらに、同定した強く結合する化学物質の核内受容体に対する活性化を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は、本研究課題を推進するため、以下のように使用する予定である。(1)ビアコアシステムを用いた受容体と低分子量化学物質の相互作用を評価するため、専用のセンサーチップを用いるが、これは非常に高価で、しかも、それぞれの受容体に別々のチップの使用が必要である。また、タンパク質を固定するための抗GST抗体、ランーニングバッファー、再生溶液など、高価な試薬が多く必要である。さらに、ディスポーザルなプラスチック器具、システム維持用のキットなどにも多く高価な消耗品が必要である。これらを消耗品費で賄う。(2)得られた成果については、国内の学会(環境ホルモン学会、日本生化学会、日本化学会等)で発表するが、参加のために旅費を充当する。また、論文発表のため、投稿料、別刷代に使用する。
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