研究概要 |
ほ乳類培養細胞における、ナノマテリアルによる生体分子損傷から染色体異常・ゲノム機能不全へ至る分子メカニズムを明らかにする。染色体中に生じるDNA損傷には、DNA鎖切断や酸化的塩基損傷、メチル化や多環芳香族炭化水素など大型分子が付加した塩基など、様々である。細胞には、こうした構造の異なる多種類のDNA損傷を修復するため、複数のDNA修復系が存在する。CHO株では各種DNA修復系を欠損した変異株が利用できる。これらの細胞株を用いて、ナノマテリアルに対する細胞生残率試験を実施した。ナノマテリアルが特定のDNA損傷を作るならば、その損傷に対応する修復系を欠損した変異株は野性株に比べナノマテリアルに対して感受性が高くなるはずである。 各ナノマテリアル(多層カーボンナノチューブ(MWCNTs), カオリン, フェライト, フラーレン)を処理した細胞を4日間培養し増殖させた。細胞計数機から細胞数を、細胞性死判定蛍光試薬で生細胞数の割合を算出し、両者を乗じて生細胞数とした。その結果、NHDJ, NER, BER欠損株はMWCNTsに感受性と分かった。この増殖率の違いはMWCNTsがバルキーアダクト(大きい損傷)、DNA二重鎖切断、酸化的損傷を誘導することを示唆している。 現在、活性酸素種(ROS)の寄与を明らかにするため、ROS用プローブを用いてフローサイトメーターでROSを定量中である。また抗酸化剤(N-アセチルシステイン(NAC)およびVitamin E)を共存させて生残率試験・ROS定量を行っている。
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