研究課題/領域番号 |
23710082
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
蒋池 勇太 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (70386556)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トキシコロジー / 環境毒性学 / ゼブラフィッシュ / 小胞体ストレス |
研究概要 |
環境汚染毒性物質への曝露により、生物に様々な細胞障害が生じる。本研究は、ゼブラフィッシュをモデル動物として用いて、環境毒性学の立場から、環境汚染毒性物質が惹起する個体レベルの小胞体ストレス応答の仕組みを明らかにすることを目的としている。本年度は、ゼブラフィッシュの個体レベルで小胞体ストレス応答が観察可能であるか、代表的な小胞体ストレス誘導剤であるツニカマイシン、サプシガルジンの曝露により検討する、という計画に基づき研究を実施した。ゼブラフィッシュ胚、幼生へのツニカマイシン、サプシガルジンの曝露開始時期、継続時間、濃度について様々な組合せを試行し、in situ TUNEL法による評価を行ったが、重篤な発生異常を生じる組合せでのみTUNEL陽性細胞が検出された。従って、本研究においては、アポトーシス発現頻度は評価の指標として適切でないと結論し、小胞体ストレスマーカーの発現レベルの上昇と異所的発現が、重篤な発生異常を伴わずにin situハイブリダイゼーション法により検出される条件を決定した。また、小胞体ストレス伝達経路の解析に必要な抗体のゼブラフィッシュとの交差性について検討した。検討の迅速化のため、ゼブラフィッシュ尾鰭由来培養細胞BRF41を用いた。ツニカマイシン、サプシガルジンをBRF41に曝露し、各伝達経路のタンパク質の動態をウエスタンブロッティング法により経時的に観察した。その結果、ゼブラフィッシュの小胞体シャペロンおよび小胞体ストレス伝達経路に関与するタンパク質の多くが市販の抗体で検出可能であることを明らかにしたのみならず、培養細胞レベルではあるが、小胞体ストレス伝達経路の活性化の詳細を得た。さらに、ゼブラフィッシュ胚およびBRF41にカドミウム、無機水銀、トリブチルスズ、鉛をそれぞれ曝露し、トリブチルスズ曝露が最も顕著に小胞体ストレスを惹起することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時の研究計画で本年度の検討課題とした、ツニカマイシンおよびサプシガルジンによる小胞体ストレスの誘導について、曝露条件および、GRP78、GRP94、CHOPの発現への影響の検討を終了させた。また、当初の研究計画では次年度以降の検討課題とした、小胞体ストレス伝達経路の解析について、解析に必要な抗体のゼブラフィッシュとの交差性の検討を終了させた。さらに、代表的な環境汚染毒性物質として、当初予定していたカドミウムよりもトリブチルスズのほうがより明瞭に小胞体ストレス応答を惹起し、毒性を発現することを明らかにした。以上のことから、本年度の研究は、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、本年度に検討終了したゼブラフィッシュ胚、幼生へのツニカマイシン、サプシガルジンの曝露の開始時期、継続時間、濃度の条件下で個体レベルでの小胞体ストレス伝達経路の解析を行う。その後にトリブチルスズ曝露による個体レベルでの小胞体ストレス応答の機序について解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題に関連する学会参加の旅費には所属教室の予算を充当したため、旅費が生じなかった。また、本研究課題からの論文投稿には至らなかったため、論文投稿用の予算が未使用になった。それらの一部は消耗品の購入に充てた。残は次年度使用分とし、データ解析、特に画像処理の迅速化を図るため、パーソナルコンピュータおよびソフトウェアの購入を予定している。次年度使用分と次年度請求分を合わせ、先に提出した平成24年度科学研究費補助金交付申請書費目明細に従い使用する。
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