研究課題/領域番号 |
23710082
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
蒋池 勇太 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (70386556)
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キーワード | 環境毒性学 / 小胞体ストレス応答 / ゼブラフィッシュ |
研究概要 |
環境汚染毒性物質への曝露により、生物には様々な細胞障害が生じる。本研究は、ゼブラフィッシュをモデル動物として用いて、環境毒性学の立場から、環境汚染毒性物質が惹起する個体レベルの小胞体ストレス応答の仕組みを明らかにすることを目的としている。 申請時の計画を大幅に上回った昨年度の研究の進展を受け、本年度は「ゼブラフィッシュの胚・幼生へのツニカマイシン、サプシガルジンの曝露を行い、個体レベルでの小胞体ストレス伝達経路の解析を行う。また、トリブチルスズ曝露による個体レベルでの小胞体ストレス応答の機序について解析する」という昨年度の成果報告時に立案した計画に基づき研究を実施した。ツニカマイシン、サプシガルジンおよびトリブチルスズ曝露によるGRP78, GRP94および CHOPの転写産物の量の変化をin situ hybridization法により検討した。その結果、ゼブラフィッシュ胚において、小胞体ストレス応答は組織特異的に起こり、応答する組織は刺激の種類によって異なることを見出した。GRP78については、免疫染色によっても同様の結果を得た。 また、昨年度より採用しているゼブラフィッシュ由来培養細胞BRF41を用いて、ツニカマイシン、サプシガルジンおよびトリブチルスズ曝露による各小胞体ストレス伝達経路の活性化の詳細を経時的に観察した。PERK-eIF2α経路については、PERKおよびeIF2αタンパク質のリン酸化、ATF4タンパク質の発現亢進を検出し、活性化を確認した。IRE1-XBP1経路については、IRE1タンパク質のリン酸化、XBP1 mRNAの特異的なスプライシングを検出し、活性化を確認した。ATF6経路については、ゼブラフィッシュと交差する抗体が販売されておらず、検討できていない。 以上の成果は四回の国内学会において発表し、現在、論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の成果報告時に立案した「ゼブラフィッシュの胚・幼生へのツニカマイシン、サプシガルジンの曝露を行い、個体レベルでの小胞体ストレス伝達経路の解析を行う。また、トリブチルスズ曝露による個体レベルでの小胞体ストレス応答の機序について解析する」という計画のうち、小胞体ストレス応答反応のアウトプットとしてのGRP78、GRP94、CHOPの発現変化についてはツニカマイシン、サプシガルジン、トリブチルスズ全てで検討を終了した。また、ゼブラフィッシュ由来培養細胞BRF41におけるツニカマイシン、サプシガルジンおよびトリブチルスズ曝露による各小胞体ストレス伝達経路の活性化の詳細を経時的に明らかにした。残る各小胞体ストレス応答伝達経路の個体レベルでの活性化の解析については、後述の方策に則り次年度中に終了可能な目途を立てている。 したがって、現在までの達成度は、おおむね順調である、と言える。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、小胞体ストレス応答反応のアウトプットとしてのGRP78、GRP94、CHOPの発現変化についてはツニカマイシン、サプシガルジン、トリブチルスズ全てで検討を終了している。最終年度となる次年度は、本年度に得た培養細胞を用いた解析の結果を考慮して、PERK-eIF2α経路およびIRE1-XBP1経路に焦点を絞り、各活性化マーカーの動態について組織特異性に注目して解析する。免疫染色を中心に行い、当初の計画にある胚の抽出物に対するウエスタンブロッティングは行わない。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題に関連する学会参加の旅費について、参加した四回のうち三回は東京開催、あとの一回には所属教室の予算を充当したため、旅費が生じなかった。また、本研究課題からの論文は現在投稿中であり、本年度中の受理には至らなかったため、予算が未使用になった。未使用分は次年度使用分とし、次年度使用分と次年度請求分を合わせ、先に提出した平成25年度科学研究費補助金交付申請書費目明細を一部変更し、近日発売された実体顕微鏡ステージ自動温度制御システムを導入する。
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