研究課題/領域番号 |
23710089
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
加藤 雅彦 岐阜大学, 工学部, 助教 (00578312)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 有機性廃棄物 / 家畜ふん堆肥 / 環境修復 / 不溶化 / 生態系修復 / 重金属 / 土壌汚染 / 原位置拡散防止 |
研究概要 |
国内の重金属汚染件数の半数以上を占める鉛汚染土には,掘削除去などの物理化学的処理が行われている.しかし,安全性・経済性を考慮し,原位置での汚染拡散防止技術が求められている.汚染拡散防止には,鉛を不溶化させる必要がある.鉛は,有機物,リンと反応し,不溶化物を形成することが知られている.そこで,有機物,リンを多く含む低コスト資材として,有機性廃棄物(堆肥)の鉛不溶化効果に着眼した.有機性廃棄物は,植物や土壌微生物への養分供給能を有するため,土壌微生物活性の向上による土壌生態系の回復も期待される.本研究では,有機性廃棄物を利用した鉛不溶化と土壌生態系の回復を同時に確立する鉛汚染土修復技術の確立を目指す. 平成23年度は,有機性廃棄物(堆肥)を利用した汚染土修復技術の確立に必要である鉛-有機物-リン複合系における鉛不溶化機構の解明を試みた.実験には,リンを多く含む無機物画分と土中で分解性の低い有機物画分を堆肥から抽出し供試した.両者の混合率を段階的に変化させた疑似堆肥を汚染土に10%w/wで添加,180日間培養し,鉛の溶出量,化学形態,二酸化炭素発生量,土壌微生物活性量を測定した.無機物画分を25%以上含む疑似堆肥添加区では,逐次抽出法による残渣態鉛が疑似堆肥未添加よりも多く,逐次抽出法の有機物複合態鉛に大きな違いはなかった.堆肥の有機物画分が存在していても無機物中リンと鉛との反応によって緑鉛鉱が生成されたと推察された.二酸化炭素発生量とウレアーゼ活性,サッカラーゼ活性は,いずれの疑似堆肥においても疑似堆肥未添加よりも高かった.しかし,デヒドロゲナーゼ活性は,有機物画分を含む疑似堆肥で疑似堆肥未添加よりも上回った.これらのことから,土壌生態系も修復できる不溶化資材としては,無機資材のみでは不十分であり,無機物と有機物の両方を含む堆肥等の有機性廃棄物が効果的と推察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究の目的は,鉛の化学形態変化の解析で鉛-有機物-リン複合系における鉛不溶化機構を解明することであった. 堆肥に含まれる無機物画分と有機物画分の両者の混合率を段階的に変化させた疑似堆肥を作製し,汚染土壌に添加したところ,逐次抽出法の残渣態画分は,無機物画分の混合率が増加することで増加した一方で,逐次抽出法の有機物複合態鉛に大きな違いはなかった.このことから,鉛-有機物-リン複合系における鉛の不溶化は,有機物の存在に大きな影響を受けず,鉛-リン不溶化物を形成することを明らかにした. 以上のことから,当初目的を達成したと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は,およそ当初計画通り研究を進めることができたため,平成24年度は,交付申請書に記載した内容を進める予定である.すなわち,不溶化された鉛化合物の土壌環境中での安定性を植物根の生理作用,土壌pH,土壌水分と因子とし,明らかにする.ただし,平成23年度においてXAFS法を用いた非破壊の鉛形態分析を行ったが,現在解析を進めている段階である.平成24年度においては,更にXAFS法による鉛化学形態分析・解析を進め,多角的に鉛-有機物-リン複合系における鉛不溶化機構の解明を更に進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究費については概ね予定通り使用し,平成24年度への使用残額はおよそ1万円であった.平成24年度の研究費の使用計画は,交付申請書のとおり行う予定であり,試薬などの消耗品を50万円,研究成果発表やXAFS分析のための旅費を50万円,分析に関わる費用などのその他として60万円を計画する.
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