研究概要 |
平成23年度までの研究で,土壌生態系も修復できる不溶化資材としては,無機性資材だけでは不十分であり,無機物と有機物の両方を含む堆肥等の有機性廃棄物が効果的であることがわかった.具体的には,鉛を不溶化するリンを多く含む無機物と易分解性有機物の少ない腐熟の進んだ有機物を含む堆肥が不溶化資材に適当と考えられた. 平成24年度は,上記堆肥によって不溶化された鉛の土壌環境条件(植物根の生理作用,土壌pH,土壌水分)に対する安定性を明らかにすることを試みた.リンを多く含む無機物と腐熟の進んだ有機物をそれぞれ家畜ふん堆肥から特異的に抽出し,その抽出物に鉛を吸着させた.鉛吸着物を,無機物:有機物=100:0, 50:50, 25:75となるように混合し,模擬鉛吸着堆肥を作製した.作製した模擬堆肥を未汚染土へ10%w/wで添加し,培養試験を行った.土壌環境条件として,ア.植栽の有無,イ.水分飽和度(10, 50, 100%),ウ.土壌pH(5.0, 7.0, 8.5)を設けた.培養終了後の土壌を用い,交換態鉛量を求め,模擬堆肥から溶出した鉛割合を評価した. 水分飽和度においては,飽和度の違いによる鉛溶出率の違いはみられず,有機物を多く含む模擬堆肥ほど溶出率は,高くなる傾向であった.一方,土壌pH,植栽条件では,無機物のみの模擬堆肥では環境条件による鉛溶出率に違いはなかったが,有機物を含むことで,植栽有,低土壌pH条件で鉛溶出率は,高くなる傾向であった.しかしながら,いずれの土壌環境条件,模擬堆肥においても鉛溶出率は,1%未満であり,模擬堆肥によって不溶化された鉛の99&%以上が土壌中で安定的に存在したことが推察された. 本研究の成果より,無機物にリンを多く含み腐熟の進んだ有機物で構成される有機性廃棄物は,鉛不溶化と同時に生態系の回復も可能であることが示唆された.
|