研究課題/領域番号 |
23710091
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
岡村 恵子 豊橋技術科学大学, 先端農業・バイオリサーチセンター, 研究員 (10570533)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 茶園土壌 / マイクロアレイ / ITS / 土壌環境モニタリング / 指標微生物 |
研究概要 |
本研究では、農耕地土壌における適切な肥料および農薬施用のための土壌管理システムの構築を目標とし、土壌微生物を指標生物とした土壌環境モニタリング法の開発を行う。指標生物として、農耕地土壌などを含めた自然環境中に普遍的に存在する、アンモニア酸化微生物に着目した。特に茶園土壌などの強酸性環境下では分布量が高く、生物指標として適していると考えられる。まず、本大学近隣地域に散在する茶園から土壌を採取し、pHと塩素酸塩阻害法によるアンモニア酸化活性の定量分析を行った。また、採取した茶園土壌試料からDNA抽出を行い、アンモニア酸化微生物である、アンモニア酸化アーキア(AOA)とアンモニア酸化バクテリア(AOB)の各アンモニアモノオキシゲナーゼαサブユニット(amoA)遺伝子を標的としたプライマーセットを用い、PCR-DGGE解析を行った。さらに、AOAおよびAOBのamoA遺伝子を標的としたクローンライブラリー解析を行った。茶園土壌のpHは2.8から4.8、アンモニア酸化活性は0.03から0.22μg NO2-_N wet soil g-1 h-1であり、両値とも採取地点によって著しい違いがあった。PCR-DGGE解析の結果、AOA-amoA遺伝子のDGGEプロファイルは、茶園土壌で大きく3つのパターンに分かれた。クローンライブラリー解析では、AOA-amoA遺伝子クローンの約85%が、強酸性土壌由来のクローンおよび好酸性アンモニア酸化アーキアであるNitrosotalea devanaterraによって構成される"Acidic soil group"のクラスターに含まれた。一方、AOB-amoA遺伝子クローンの約85%がNitrospira属細菌によって構成されるクラスターに含まれた。これらの結果より、茶園土壌には、酸性環境に適応したAOAおよびAOBが優占する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
土壌微生物を生物指標とした実用的な土壌環境モニタリング法の開発を行うにあたり、当初は指標微生物として土壌微生物全般を対象とする予定であった。しかし、微生物生態学的見地から考察しても、本研究でモニタリング対象とする土壌は通常の自然環境と比較して、微生物多様性、特に細菌の多様性が非常に大きくなると考えられる。そのため、特定の系統群か特定機能に焦点を絞ることで、研究の方向性がより明確になり、得られる結果もより信頼性が高くなると期待できる。さらに、特定系統群および機能に絞ることで、土壌の物理化学的環境パラメータとの関係性がより的確に評価できると考えられ、環境評価の柱となる指標生物の選抜が効果的に行えると考えた。今年度は、硝化の一部であるアンモニア酸化能を持つ、アンモニア酸化アーキアおよびアンモニア酸化バクテリアを標的とし、研究を行った。アンモニア酸化は、窒素化合物の地球規模の循環経路の一部で、農耕地土壌における施肥窒素の損失、窒素酸化物(NOX)による大気汚染および硝酸塩による地下水汚染の原因となっている。特に茶園では、アンモニア態窒素の多量施肥が慣行されており、硝化による土壌の強酸性化および硝酸塩による地下水汚染が深刻となっている。硝化の律速であるアンモニア酸化は、アンモニア酸化アーキア (AOA) とアンモニア酸化バクテリア (AOB) が行っている。これらは様々な土壌に分布しており、近年生態学的知見が蓄積されつつある。しかし、酸性土壌においては未だ不明な点が多い。そのため、本研究は土壌微生物学的見地から考察しても、非常に興味深いと考えられる。研究の達成度については、茶園土壌の物理化学的環境パラメータのうち、アンモニア酸化活性の測定法の条件検討が必要であった。エフォートは5%に途中変更したが、指標微生物の特定機能に焦点を絞ったので、短時間で効率よくデータ収集が可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度では、環境指標微生物として特定の機能に着目し、アンモニア酸化微生物を標的とした研究を行った。次年度では、クローンライブラリー解析から存在が確認された、アンモニア酸化バクテリアおよびアンモニア酸化アーキアの純粋分離を試みる。 一般的な知見として、土壌微生物の多くは分離培養が困難であるとされているため、新たな「電極基盤に微生物細胞を付着し剥離回収する方法」の使用を検討している。得られた分離菌株からITS-DNAをPCR増幅し、マイクロアレイのプローブDNAとする。また一方で、土壌環境評価の重要な指標となり得るAcidobacteria門細菌に関して、上述したアンモニア酸化バクテリアおよびアンモニア酸化アーキアと同様な研究を行う。Acidobacteria門細菌は自然環境中に普遍的に存在し、特に土壌環境では分布密度が高く、環境指標微生物として需要であると考えられる。特に本研究で対象とした酸性土壌では、場合によってAcidobacteria門細菌の分布量が過半数にも及ぶことが報告されている。しかしこれらの知見は単にDNAレベルの情報に基づくものであり、さらに研究を発展させるためには純粋分離菌株の獲得が必須である。近年の分離培養技術の発達に伴い、Acidobacteria門細菌の分離・培養に成功したとの報告は数例あるが、未だにその大部分は未知のままである。 次年度の研究計画としては、アンモニア酸化バクテリアおよびアンモニア酸化アーキアの純粋分離、分離菌株からITS-DNAのPCR増幅を行う。同様に、Acidobacteria門細菌を標的とした微生物生態学的解析(PCR-DGGE、クローンライブラリー解析)、土壌の物理化学的パラメータ分析、純粋分離、分離菌株からITS-DNAのPCR増幅。以上より求めたITS-DNAのPCR増幅産物を用いて、DNAマイクロアレイを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度では、前年度で計画した研究の後半部分を行うので、今年度分と併せて前年度から繰り越した研究費の全額を使用する予定である。今年度は、土壌物理化学的パラメータ分析、マイクロアレイの作成を行い、土壌微生物の分離培養装置を購入する予定である。 特に、新たな微生物分離技術として開発中の、「電極基盤に微生物細胞を付着し剥離回収する方法」を用いることを検討している。一般的な知見として、土壌微生物は土壌粒子に強固に結合していることから、その大部分が難培養性で、これまで行われてきた方法では分離培養が困難であるとされている。このように、極めて新規性が高く、汎用性の高い装置であると考えられることから、詳細な条件検討が必要となり、そのための備品、消耗品も新たに購入する必要がある。 また、土壌物理化学的パラメータ分析は、研究費の申請段階では、詳細なパラメータ(アンモニア態窒素、硝酸対窒素、全炭素、全窒素、C/N比、無機イオン、pH、電気伝導度、土壌水分含量)を提案したが、これらを全て行うには、時間と労力、さらに専門的技術が必要で、研究実施期間の修了考は困難であると考えられた。そのため、専門の分析機関に委託するか、DNAレベルでの実験データと比較検討しながら、どのようなパラメータを分析するべきかを決定する。 本研究テーマでは、最終的にDNAマイクロアレイを作製し、実際の土壌サンプルを利用して、精度評価を行う予定である。DNAマイクロアレイの作成は専門機関に委託せざるを得ないが、実際マイクロアレイを用いて実験をする場合には、画像解析ソフト、DNAハイブリダイゼーション関連の消耗品、試薬などが必要で、これらを新たに揃えるには、非常にコストがかかる。そのため、DNAマイクロアレイの作成から、評価までを一式で行うように、専門機関に委託するのが、最も安価で効率の良い結果が得られると考えられる。
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