研究課題/領域番号 |
23710092
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小西 宏和 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60379120)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 希土類金属 / リサイクル / 電気化学 / 溶融塩 |
研究概要 |
本研究では、溶融塩電解と合金化電極を用いた希土類金属の分離・回収条件の確立を目指し、比較的データの豊富な塩化物系溶融塩における基礎研究により、希土類金属の分離・回収に適した基板金属、合金組成、電解条件の最適化を行う。本年度は450℃の溶融LiCl-KCl中における基礎研究に取り組み、希土類金属Tbと基板金属Niとの合金の形成電位と成長速度を検討した結果、以下の成果を得た。(1)Tbと合金を形成しないとされるMoを作用極に用いて、走査速度0.10 V/sで浸析電位から卑な方向に電位走査すると、大きなカソード電流が0.48 V(vs. Li+/Li)付近で生じた。ここでの電流は、MoがTbと合金を形成しないことから、Tb析出に起因していることがわかった。(2)Niを作用極に用いた場合、カソード電流が0.75 V付近から流れ始めた。ここでのカソード電流は、Mo電極を用いた際のTb析出電位0.48 Vより貴な電位領域で観測されたため、Tb-Ni合金の形成に起因することがわかった。また、電位走査方向を反転させると、Tbの溶出による複数のアノード電流ピークが生じた。これらのアノード電流ピークは、それぞれ複数の異なるTb-Ni合金相からのTb溶出に起因する可能性が示された。(3)開回路電位の経時変化測定で観測された電位プラトー 0.80 V、0.95 V、1.56 VがTb-Ni合金相の2相共存領域に対応することを明らかにした。(4)Ni電極を用いた0.60 V、1時間の定電位電解により15μm程度の密着性の良い緻密なTbNi2薄膜を作成することができた。(5)一度作成した緻密なTbNi2薄膜を、0.90 VではTbNi3、1.20 VではTbNi5、1.60 VではNiへ相変化させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書では、溶融LiCl-KCl中でのTbCl3のみ、あるいはDyCl3、NdCl3、TbCl3を二~三者を添加した浴中において、希土類金属イオンの電気化学的挙動、合金形成電位、成長速度を明らかにする予定であったが、本年度は、Tbに限り上記検討を行った。達成度は、ほぼ60%程度である。研究進行が遅れた原因として、実験手法の確立、作製した合金相のXRD同定に時間がかかったこと等が挙げられる。次年度は、本年度行うことが出来なかった、二~四元系の(Dy、Nd、Tb)-Ni合金薄膜の電解条件による作り分けの可否を確認する必要がある。さらに、不純物としてFeが共存する系に展開するとともに、温度の効果、Cu、Fe基板金属による影響等を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、二~四元系の(Dy、Nd、Tb)-Ni合金薄膜の電解条件による作り分けの可否、さらに、不純物としてFeが共存する系に展開するとともに、温度の効果、Cu、Fe基板金属による影響等を検討する必要があり、実験に時間を要するが、昨年度の研究において実験手法の確立、XRD同定のノウハウを学んだため、昨年度よりも飛躍的に研究が進展することが期待できる。また、研究代表者以外にも大学院生2名が新たに研究に加わえ、昨年度よりも研究体制を充実させた。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は研究を進めていく上で、科研費の執行が許可される前に、研究の消耗品を購入する必要があったため、使用可能な運営費交付金等の予算で消耗品を購入した。次年度は、4月から科研費が執行可能なため、予定通り科研費の執行を行い、研究を実施する。また、購入予定である試薬の希土類金属塩化物、電極の金属板が値上がりし続けているため、今年度の残額も次年度と合わせて全額使用する。
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