本研究では、溶融塩電解と合金化電極を用いた希土類金属の分離・回収条件の確立を目指し、比較的データの豊富な塩化物系溶融塩における基礎研究により、希土類金属の分離・回収に適した合金組成、電解条件の最適化を行った。本年度は450℃の溶融LiCl-KCl中における二~四元系の(Dy、Nd、Pr、Tb)-Ni合金の電解条件による作り分けの可否を確認した。(1)TbCl3とNdCl3あるいはPrCl3をいずれも0.50 mol%添加した系において、Ni電極を用いて定電位電解により作成した合金を溶解、ICP測定することにより各元素の析出量を算出した結果、0.69 Vと0.70 Vで1時間の定電位電解により得られた合金試料中のTb/PrとTb/Ndの質量比はそれぞれ約41と56となり、適切な電位で保持した場合、TbとPr、TbとNdを分離できることがわかった。(2)TbCl3、NdCl3、PrCl3すべて0.50 mol%添加した系において、(1)と同様にICPにより各元素の析出量を算出した結果、0.65 Vで1時間の定電位電解により得られた合金試料中のTb/(Nd+Pr)の質量比は約51となり、適切な電位で保持した場合、Tbを(Pr+Nd)から分離できることがわかった。(3)TbCl3とDyCl3、さらにNdCl3とPrCl3をいずれも0.50 mol%添加した系において、0.60-0.80 V間で定電位電解により得られた合金試料中のTb/Dy、Nd/Prの質量比は約1なり、TbとDy、NdとPrの相互分離は困難であることがわかった。
|