研究課題
秋田県八郎湖は、その富栄養化の進行とアオコの発生などから平成19年12月より湖沼法の指定を受け、その水質改善対策が急務となっている。アオコを形成するMicrocystis属などはmicrocystinという極めて強力な毒素を産生することから、その発生は八郎湖汚濁における県民および近隣住民の最大の懸念となっている。また、湖水が農業用水に使用されていることや流入河川の末端付近に上水施設があることを鑑みてもアオコ問題の解決は焦眉の課題といえる。本研究では、競合PCRとDNA濃度を高精度かつ高感度で分析できるDNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置を組合せた新規な動態解析技術の環境サンプルへの適用について調べた。本手法の正確性を確認するため定量PCRとの比較も行っているが、本年度は環境サンプルの評価を行うためより特異性の高いTaqManプローブ法に変更した。その結果、本開発手法は定量PCRと同等の感度を持つことが明らかになった。加えて、Microcystis属標準株に対して行った実験では定量PCRよりもmicrocystin合成酵素遺伝子(mcy遺伝子)の感度が高く、本開発プライマーが環境中の有毒株の実態を良く反映することが示唆された。一方、アオコ発生水域における真正細菌の遺伝子多様性を解析するために、次世代シーケンサーを用いて16S rRNA遺伝子のPCRパイロシーケンスを行った。その結果、アオコが集積した8月のサンプルではMicrocystis属が真正細菌全体の約45%を占めていた。また、門レベルでの解析ではCyanobacteria門を除くとProteobacteria門およびBacteroidetes門が優占かつ変遷しており、アオコの消長に伴うシース(細胞外多糖類)やアオコ毒microcystinの分解などにこれらの細菌群が関与していることが予想された。
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秋田自然史研究
巻: 63 ページ: 7-11
巻: 61 ページ: 1-5
Journal of Bioscience and Bioengineering
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