研究課題/領域番号 |
23710098
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
麓 隆行 近畿大学, 理工学部, 講師 (30315981)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 樹脂ポーラスコンクリート / X線CT |
研究概要 |
本研究では,異なる粒径の砕石を使用し,薄膜で弾力性のある,古紙由来のバイオポリウレタンで接合した植生ブロックを開発することを目的とし,本年度は,以下の3つの課題に取り組んだ.まず,バインダーに用いるバイオポリウレタンの強度,弾力性の調整方法の検討に取り組んだ.原料をミルで破砕し,室内で作製した主剤と硬化剤の混合割合を0.6~1.0としたバイオポリウレタン樹脂のダンベル型試験体の引張試験を行い,荷重変位関係を計測した.混合割合と引張強度の関係は得られたものの,荷重変位関係にポアソン比が大きいことによる滑り抜けが見られ,試験機の改良を行う必要があることがわかった.一方,ポーラスブロックの力学特性把握する予定であったが,万能試験機の不具合から,試験機の作製を中心に行い,次年度に実施することとした.また,河川,港湾での暴露試験によるバイオポリウレタンの生態系調和性の検討を行った.本年度は,2週間の短期暴露時の材料表面への微生物付着状況について1年間の季節変化を計測した.また,1年間の長期暴露した場合の生物付着状況を検討した.短期暴露では,モルタル板に比べて,樹脂板は砕石と同様に微生物が多様に付着している可能性があることが分かった.現在,計測中であり,途中までの経過を口頭発表で発表することとした.さらに,24年度実施予定の植生ブロックの空隙構造解析に関して基礎検討を行った.容器に詰めた粒径の異なる砕石のX線CT装置による撮影条件の検討と,画像解析による砕石粒子や間隙の計測を行った.撮影条件として,適度な精度で粒子同定には,適切なエロージョンやダイレーション,粒子の統合条件が必要であることが分かった.また,その条件を使用すれば,粒子間隙の同定を行うことができた.その一部を論文として現在投稿中である.今後,ポーラスブロックでの適正な同定が可能かを検討する基礎資料が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,異なる粒径の砕石を使用し,薄膜で弾力性のある,古紙由来のバイオポリウレタンで接合した植生ブロックを開発することを目的とし,以下の4つの課題に取り組む予定である.硬化剤混合割合や養生条件によるバイオポリウレタンの強度,弾力性の調整方法の検討,河川,港湾での暴露試験によるバイオポリウレタンの生態系調和性の検討,植生ブロックの空隙構造解析と,その保水性,内部湿度等との関係,天然土壌における植物の根の張り方と植生ブロックの空隙構造との比較の4つである.本年度は,初年度として,はじめの2つの課題に取り組む予定であった.硬化剤混合割合や養生条件によるバイオポリウレタンの強度,弾力性の調整方法の検討については,バイオポリウレタン樹脂の基礎実験は行ったが,荷重変位の計測手法やブロック化した後の試験が試験機で不具合があり,24年度の継続課題となった.新規万能試験機の購入により不具合克服の可能性が見えたことから,24年度に当該課題に取り組む.また,河川,港湾での暴露試験によるバイオポリウレタンの生態系調和性の検討については,現場との調整の中で,1年間という長期試験の実施許可を頂き,23年度中頃から試験を行っている.実験は順調に行われており,24年度に全データの取得と考察が行える予定である.当該年度で予定の検討内容が十分にできないことから,24年度実施予定の植生ブロックの空隙構造解析の基礎実験を前倒しして行った.空隙構造解析の条件が明らかになってきており,順調に進んでいる.以上のことから,当初予定とは異なるが,順調に研究が進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,昨年度十分に検討できなかった硬化剤混合割合や養生条件によるバイオポリウレタンの強度,弾力性の調整方法の検討として,樹脂の荷重変位関係やブロック化した後の試験を実施し,バイオポリウレタン樹脂とそれを用いたポーラスブロックの力学的挙動について把握を行う.特に,X線CT装置を活用し,ブロック内の内部挙動の観察なども行い,これまでにない視点での力学的性質の把握を行う.また,河川,港湾での暴露試験によるバイオポリウレタンの生態系調和性の検討については,現場との調整の中で,1年間という長期試験の実施許可を頂き,23年度中頃から試験を行っている.実験は順調に行われており,24年度に2週間の短期暴露での微生物の付着特性と1年間の長期暴露での生物着状況の結果,考察を行う予定である.その結果により,研究室内での微生物付着実験を実施する予定もあり,これにより生態系調和性についての検討を実施する.また,本年度行った植生ブロックの空隙構造解析について,実際にブロックを作製し,砕石やポーラスコンクリートとの比較から,その空隙構造の特徴について検討する.さらに,その空隙構造と透水性,保水性との関係を調べる予定である.また,4つ目の課題である植生試験の準備を始める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究内容と,昨年度の継続課題を考え,下記の費用支出を考えている.研究として,硬化剤混合割合や養生条件によるバイオポリウレタンの強度,弾力性の調整方法の検討では,試験体作製用材料,試薬5万円,引張試験用樹脂型枠15万円,引張試験治具5万円,廃棄費用3万円を考えている.これらにより,本格的に試験を実施していくことが可能となる.また,河川,港湾での暴露試験によるバイオポリウレタンの生態系調和性の検討においては,道頓堀川や大阪港湾に浸漬した材料の分析や室内実験を予定しており,それらの課題として実験設備(ポリ容器やエアレーション機器など),分析試薬の購入10万円を考えている.さらに,植生ブロックの空隙構造解析において,分析に使用する画像解析ソフトオプションレンタル料金15万円を考えている.なお,実験補助を必要とするため,補助者への謝金5万円を考えている.一方,昨年度の研究内容を発表するため,土木学会関西支部(神戸),コンクリート工学年次大会(広島)への参加,発表4万円ならびに,情報収集として土木学会全国大会(名古屋)への参加3万円を考えている.以上より,物品費45万円,旅費7万円,謝金5万円,その他3万円,合計60万円の予算を考えている.
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