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2012 年度 実施状況報告書

古紙を原料としたバイオポリウレタンを用いた生態系調和型植生ブロックの開発

研究課題

研究課題/領域番号 23710098
研究機関近畿大学

研究代表者

麓 隆行  近畿大学, 理工学部, 講師 (30315981)

キーワード植生ブロック / ポリウレタン樹脂 / X線CT / 空隙構造 / 古紙 / ポーラスコンクリート
研究概要

本研究では,異なる粒径の砕石を使用し,薄膜で弾力性のある,古紙由来のバイオポリウレタンで接合した植生ブロックを開発することを目的としている。本年度は,以下の課題に取り組んだ。
本年度のメインとして取り組んだ課題は,空隙構造解析である。積み重ねたセラミック球のX線CT撮影を行い,測定精度確認を行った。その結果,0.5 pixelの精度で粒子径計測が可能であることがわかった。また,空隙解析では,分離の際に連結して認識される箇所があり,工学的に数値を判断する必要があることがわかった。以上から,粒子,空隙解析の特徴がわかった。
次に,3次元画像解析の実供試体の複雑な空隙構造への適用方法について,ポーラスコンクリートを対象に,粒子や空隙の計測を試みた。その結果,連結した粒子画像も適度に分離でき,同様の精度で空隙も計測できることがわかった。これは,理想的な球形とは異なり,空隙と空隙をつなぐ箇所が,くびれが顕著となるためと考えられる。
一方,昨年の研究結果から樹脂単体の力学試験を行った場合,端部の変形による滑り抜けが発生し,計測がばらつくことがわかった。そこで,樹脂単体ではなく,植生ブロック自体の変形挙動の解明する方法を考えた。まず,その挙動計測に際して,X線CTを用いて詳細な変形挙動を解明するため,樹脂ポーラスコンクリートを対象に内部の破壊の様子を検討した。その結果,内部での変形とそれに起因するひび割れ発生をとらえることができ,破壊挙動を明らかにすることができた。今後,植生ブロックの変形挙動を明らかにし,間隙に生長した植物に対して柔軟に変形,適用することを確認したいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は,異なる粒径の砕石を使用し,薄膜で弾力性のある,古紙由来のバイオポリウレタンで接合した植生ブロックを開発することを目的とし,以下の4つの課題に取り組む予定である.すなわち,①硬化剤混合割合や養生条件によるバイオポリウレタンの強度,弾力性の調整方法の検討,②河川,港湾での暴露試験によるバイオポリウレタンの生態系調和性の検討,③植生ブロックの空隙構造解析と,その保水性,内部湿度等との関係,④天然土壌における植物の根の張り方と植生ブロックの空隙構造との比較の4つである.
①については,これまでの実験で,樹脂自体の強度や弾性係数の計測は難しいことがわかった。そこで,植生ブロックとしての強度や弾性変形をとらえることとした。X線CTを用いた内部変形挙動観察と組み合わせ,配合と強度,弾性変形挙動との関係を詳細に考察する実験を次年度実施予定である。
②については,生態系との調和性について,河川や港湾での供試体浸漬実験を実施している。季節間の変動や複数年での変動について計測を続けており,次年度にとりまとめる予定である。
③については,本年度,空隙構造の画像解析について目処が立った。次年度,①の試験と並行して実施する予定である。
④については,植生ブロックを作成し,そこへの植生試験を次年度実施する予定である。
以上のように,それぞれの課題について,終了していないが,次年度に終了する目処が立っていることから,おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

当初解明しようと考えていた課題は,①硬化剤混合割合や養生条件によるバイオポリウレタンの強度,弾力性の調整方法の検討,②河川,港湾での暴露試験によるバイオポリウレタンの生態系調和性の検討,③植生ブロックの空隙構造解析と,その保水性,内部湿度等との関係,④天然土壌における植物の根の張り方と植生ブロックの空隙構造との比較の4つである。次年度は最終年度であり,成果をまとめるために研究を実施していく。
②について,暴露試験では,季節間での供試体への微生物の付着状況や1年間浸漬し続けた際の観察結果をまとめる予定である。具体的には,季節ごとに付着する微生物の分類を調べる。また,1年浸漬した際の貝殻等生物の付着の変遷を確認し,微生物の付着状況との関係を考察する。
①および③について,ブロックの空隙構造解析は確立しているので,それを元に,次年度にブロックの植生や強度,弾力性および保水性などの要因との関係を調べる予定にしている。特に,配合要因を変化させた際には,万能試験機を用いた強度,弾力性の実験に加え,X線CTによる変形挙動観察を行い,配合要因が変形挙動に影響を及ぼすメカニズムを考察する。
④について,次年度,植生実験を実施予定である,根の生長の様子をX線CTで確認する試みを行い,成長具合と植生ブロック内での根等の挙動との関係を考察したいと考えている。
以上から,提案した植生ブロックの性能について,力学的視点,物理的視点,そして生物的視点からの解明ができると考えており,これらを研究成果としてまとめることを予定している。

次年度の研究費の使用計画

次年度研究費は,今後の研究推進の方策を実施するため,植生ブロックを作るための薬品等原料費,および植生実験のための消耗品に使用する。また,これまでの研究成果を発表する旅費,投稿費等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 新しい機構のX線CTの開発とポリマーコンクリートの圧縮試験への適用2013

    • 著者名/発表者名
      麓隆行
    • 雑誌名

      土木学会論文集

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] X線CT画像の3次元粒子計測による砕石の粒子形状の分析2012

    • 著者名/発表者名
      麓隆行,平井慎一,溝口達也,松本嶺
    • 雑誌名

      コンクリート工学年次論文集

      巻: Vol.34,No.1 ページ: 70-75

    • 査読あり
  • [学会発表] 快適と感じる歩道材料の物性評価方法に関する基礎研究2012

    • 著者名/発表者名
      松本嶺,麓隆行
    • 学会等名
      日本建築学会大会学術講演
    • 発表場所
      名古屋大学東山キャンパス
    • 年月日
      20120912-20120914
  • [学会発表] X 線CT と3 次元画像解析によるポーラスコンクリートの物性計測2012

    • 著者名/発表者名
      松本嶺,溝口達也,麓隆行
    • 学会等名
      資源・素材学会(秋季大会)
    • 発表場所
      秋田大学
    • 年月日
      20120911-20120913

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公開日: 2014-07-24  

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