研究課題
本年度は,まず道頓堀川や大阪港湾に浸漬している材料に付着する栄養素について検討した.その結果,リンや窒素の付着量では差はないが,リンの吸着量は,コンクリートでは少なく,大理石や樹脂ではやや多くなった.すなわち,植物由来の樹脂は,近自然材料となる可能性がある.リンの吸着量を有効に利用するには,空隙構造解析で内部表面積も評価の対象となる.そこで,X線CT画像の濃淡を使用し,等値面を推定することで,精度良い表面積計測を試みた.その結果,表面積は2%程度の誤差で計測できた.これにより,ブロック空隙内の表面積や,付着する樹脂膜の厚さを推定できるようになり,生態系調和性と配合設計に関する情報を得ることができる.植生実験として,小型の植木鉢を作製し,表面に5cmほどの土をかぶせて,ひまわりやヨシを生育した.しかし,残念ながら大きくなる前に枯れてしまった.これは,栄養分や水分が足りなかったためだと考えられる.そこで,2.5mm以下の粒子を用いた植生ブロックの作製を試みた.しかし,樹脂の粘性が高いため,数個の砂粒子が1つの塊になりやすく,適当な間隙をもつブロックの作製ができなかった.ただし,文献調査を実施した結果,根の成長による膨張圧は0.4~0.8N/mm2と考えられており,古紙から製造した現状のバイオポリウレタン樹脂の引張強度は1.6 N/mm2程度を有し,十分な強度,変形性能といえる.以上から,古紙を用いたバイオポリウレタン樹脂を使用した植生ブロックは,根により破壊されない程度に強度で,適切な生態系調和性も有することがわかった.よって,対象とする植物の根に適合した空隙構造をもつ植生ブロックを製造可能である.しかし,保水性が小さい.今後,低粘性の樹脂作製を試み,数mm以下の粒子を用いた保水性ブロックを製造し,大型空隙を有する植生ブロックと組み合わせた複層とすることが有用と考えられる.
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コンクリート工学年次論文集
巻: Vol.36,No.1 ページ: 1672-1677
土木学会論文集E2
巻: Vol.69,No.2 ページ: 182-191