研究課題/領域番号 |
23710100
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研究機関 | 鳥羽商船高等専門学校 |
研究代表者 |
渡辺 幸夫 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20332033)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 再生利用可能エネルギー / 海流・潮流発電 / シュラウド / 数値流体力学 |
研究概要 |
23年度については、主に潮流発電用水車とこれを取り囲むシュラウド(集流体・増速体)を組み合わせた新しいシステムに対して、性能を予測する数値解析ツールを開発し、その精度検証を行った。数値解析の方法としては、非粘性計算法として3次元境界要素法を、水車やダクト近傍の領域には、購入した汎用数値流体解析ソフトを用いたCFDを適応した。このツールを用いることにより、短時間で高精度の性能予測が可能となり、これまで設計法として多数採用例のある翼素運動量理論に代えて、本研究では設計・解析を行うものとした。 解析ツールの精度は、舶用ダクトプロペラに対する文献や、現有の水車模型(単独)に対して水槽実験を行なうことから得られた結果と、それぞれ比較することで検証した。その結果は、設計点付近で特に良好であり、その他の領域に関しても実用上問題のないレベルの精度であった。そのため、水車をシュラウドで取り囲んだ際の性能に対する効果を数値的に調査した。 シュラウドの断面形状、長さ、入口出口の断面積の大小について効果を検討した。その結果、(1)入口断面積が出口断面積よりも大きいシュラウド(ノズルタイプ)が断面積の大小関係が反対のシュラウド(ディフューザタイプ)よりも増速効果が大であり、水車の出力が増大する。(2)シュラウド長さについて、(水車直径と同程度までは)長くした方が増速効果が大であり、水車の出力が増大する。(3)シュラウド断面形状については、板状よりも翼断面形状にしたほうが、断面上下の圧力差により増速効果が見られ、水車出力の増大傾向がある。という知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に示した明らかにする内容は次のとおりである。(1)汎用CFDソフト(Fluent・CFX/ Ansys Academic Research CFD)を用いた性能解析を行う。(2) 海流発電用逆テーパ水車を設計・製作し,プロペラ単独試験器を用いた模型実験により解析法の妥当性を確認する。また,逆テーパの影響を調査するために,妥当性を検証された計算法を用いて数種の計算を行い,定性的・定量的に検証する。なお,性能解析法については,CFD以外の方法で性能を概算できるようになっている。(3) 水車を取り囲むシュラウドの断面形状を翼形など増速効果のあるものに変更し,シュラウド自身が発生する流体力,内部の流速分布などを水槽実験によって定量的に調査する。(4) 研究代表者が在籍している鳥羽商船高等専門学校の浮桟橋などを利用して,実海域における海流発電用水車の性能について調査する。 以上の4点であったが、上記のうち(1)、(2)の一部、(3)の一部、については完了しており、達成度はほぼ50%といえるため、概ね順調に進展している。(4)については、申請と助成金の差額により実行できない可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
数値解析ツールの開発が完了しているため、これを用いた水車とシュラウドの形状決定を行う。本研究は逆テーパ型の水車とシュラウドを組合せた新しいシステム開発が目的であるので、それぞれの最適化、相互影響の調査をおこなう必要性がある。数値解析だけでなく、水槽実験も行うことで、実現象の把握をする。詳細は下記のようになる。 (1)シュラウドの製作:シュラウドに関する数値解析をおこなって設計する。学内の三次元切削装置,ケミカルウッドとFRPを用いた作製方法で製作する。(2)シュラウド特性計測試験:回流水槽において次の項目を計測する。・シュラウド内流速分布の測定(現有の三次元電磁流速センサーで計測)・シュラウドが発生する流体力の測定(現有の三分力計で計測)(3)水車特性計測試験:外注した水車模型を用いて次の項目を計測する。・水車特性(従来型水車と逆テーパ水車の双方で計測)・水車の発生トルク(現有のプロペラ単独試験器のトルク計で計測)・水車の発生スラスト(現有のプロペラ単独試験器のスラスト計で計測)(4)翼断面シュラウド付海流発電用逆テーパ水車の性能解析:最適設計法は水車形状を決定するが,発電量予測などには,任意の作動状態での海流発電機の性能が必要である。解析手法の一つとして,既に開発済みの自由後流モデル境界要素法を採用する。 また,購入した汎用CFDソフトウェアを用いて、より詳細な流体力の検討を行う。シュラウドがヨー制御効果を得るための形状の検討を行う。時間的、費用的に可能であれば、実海域における試験を行う予定とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の推進方策のとおり、大別すると24年度に行う研究項目は次のようになる。 (1)シュラウドの設計・製作(2)シュラウド特性計測水槽試験(3)水車特性計測試験(4)翼断面シュラウド付海流発電用逆テーパ水車の性能解析 これらの項目に従い、(1)ではFRP作製材料(型と製品)、ケミカルウッド(型)、鋼材などのシュラウドの作製費用が必要となる。(2)(3)では、SDカードやDVDなどの記録メディア、および水車模型の作製費用(外注)が必要経費となる。また、シュラウドを三分力計に取り付ける治具を作製するための鋼材費も経費の一つとなる。 この他、各項目で解析が必要となった場合に用いる汎用数値流体力学ソフトの更新料、水槽試験の計測や数値解析を行うためのPC、成果発表を行う際に必要となる旅費、実験に関する、あるいは数値解析に関する消耗品費、などが全体に対して必要である。費用的に可能であれば、実海域における計測を行うために研究費を使用する場合もある。
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