研究課題/領域番号 |
23710103
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
小瀬 知洋 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 助教 (60379823)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 難燃剤 / 有機臭素系難燃剤 / 有機リン系難燃剤 / 放散 / 製品 |
研究概要 |
市販されている2008年製のノートブック型のパーソナルコンピューター及び液晶テレビを使用して、動作状態でのチャンバー試験を実施し、リン系および臭素系難燃剤の放散試験を行った。加えて2000年前後に製造された旧型のパーソナルコンピューターやブラウン管型テレビについても同様の検討を行った。結果、旧型のパーソナルコンピューターおよびブラウン管型テレビからはテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)やポリ臭素化ジエチルエーテル類(PBDEs)などの有機臭素系難燃剤(BFR)が高い濃度で検出された。一方で2008年製の製品についてはこれらBFRは検出はされた物の、その濃度は低くRoHS指令、施行後の製品のノンハロゲン化の流れを反映した結果となった。しかしながら大体の難燃剤として使用が伸びているリン酸トリエステル類難燃剤については、液晶型テレビから他製品と比較して1オーダー高いレベルで検出された。検出されたのは主にリン酸トリフェニルとリン酸トリスクロロエチルであった。さらに新しいリン系の難燃剤である縮合リン酸エステル類難燃剤について、これを使用した製品の筐体プラを使用して、実使用条件下における挙動の検討を行った。結果、製品の使用条件下においては樹脂に添加された難燃剤の顕著な加水分解とフェノール、ビスフェノールAの生成は見られなかったものの、難燃剤製剤に元々不純物として含まれていたと考えられるフェノール類化合物の放散が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に実施を予定していた実使用条件下における縮合リン酸エステル類難燃剤の分解の検討について、予定通りの検討を行うことができた。結果、バージンペレットを使用して作成した模擬試料による検討からビスフェノールAジフェニルホスフェートからフェノール及びビスフェノールA、レゾルシノールジフェニルホスフェートからフェノールとレゾルシノールが生じることが確認された。これらの加水分解による生成は製品使用条件下においては顕著では無かった物の、製剤そのものに未反応物質が残留しているため、特に低分子量のフェノールについては使用条件下での放散が確認された。またH24年度以降に予定しているPC等家電製品を用いた難燃剤および分解生成物の揮発ポテンシャルおよびハウスダストへの移行について難燃剤についての予備検討を行った結果、いくつかの製品から有機臭素系および有機リン系の難燃剤の放散が確認された。これらの製剤は次年度以降実施する、製品部以後との詳細な放散挙動の検討や、ハウスダストへの移行の検討時に検討項目に加える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討においては、試験に使用するいくつかの製品および試料について、国立環境研究所と共同で行われている事業と共有化する方向で調整ができ、(同事業においては含ハロゲンリン酸エステル類難燃剤やBFRなどハロゲン系難燃剤が主なターゲット)結果として、試料の調達費用を軽減すると同時に、本研究に用いた試料についてのBFRについての詳細な検討結果を得ることが可能となった。この結果として、試料にする製品の調達費を中心に概算で43万円程度が本年度予算から繰り越すことが可能となると同時に、当初予定していなかったいくつかの化合物(含ハロゲンリン酸エステル類など)についても放散量情報を得ることができた。これを踏まえて今後の研究の推進方向としては、繰越金をもちいて、新たに放散が確認された物質に関して標準物質の入手を含めた分析環境の整備を行い、次年度以降の検討対象に加えることを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越金43万円は主として含ハロゲンリン酸エステル類を中心とした検討対象物質の拡充のための標準物質購入及び分析環境の整備に充てる。またさらに予算上に余裕がある場合は新たな製品を試料として準備し、検討対象を拡充することでデータの信頼性を補強する。
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