研究課題/領域番号 |
23710109
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 努武 千葉大学, 分析センター, 特任助教 (40586822)
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キーワード | ナノ構造化学 / ナノ表面・界面 / 擬高圧効果 / 分子吸着現象 / エネルギー効率化 / 高圧有機化学 |
研究概要 |
本研究の目的はナノ細孔中への分子吸着現象について検討し、気相および固相中で既に確認されている、吸着相の密度がバルク相の密度よりも高くなる現象(擬高圧効果)が液相中でも発現し、その現象を利用してナノ細孔中であれば常圧下でも高圧有機化学合成反応が進行することを確認することである。平成24年度の実績は以下の2つである。 ①ナノ細孔中の高圧有機化学合成反応(銅フタロシアニン合成)について 平成23年度で選定したナノ細孔性炭素である市販品活性炭、活性炭素繊維、そして単層カーボンナノチューブを使用して、液相中の高圧有機化学合成反応である銅フタロシアニン合成を行った。市販品活性炭に関しては平成23年度に試行を行い、その傾向を確認していたが、銅フタロシアニン分子が吸着できるサイズのナノ細孔を有する他のナノ細孔性炭素材料においてもこの合成反応が進行し、収率や反応速度が上昇することを確認した。また、反応後のナノ細孔性炭素に対して、透過型電子顕微鏡観察などの各種キャラクタリゼーションを行った結果、ナノ細孔中で銅フタロシアニンが生成している可能性が示唆された。 ②ナノ細孔中の高圧有機化学合成反応(trans-シクロヘキサンジオール合成)について 高圧有機化学合成反応の他の系として、1,2-エポキシシクロへキサンからtrans-シクロヘキサンジオールへのエポキシ開環反応を選定した。この反応も通常条件下では10000気圧程度の圧力を必要とする高圧有機化学合成反応である。①と同様にナノ細孔性炭素として市販品の活性炭素繊維を用い、液相中・常圧下で反応を進行させたところ目的のtrans-シクロヘキサンジオールが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
常圧下におけるナノ細孔中での高圧有機化学合成反応について、銅フタロシアニン合成反応だけでなくtrans-シクロヘキサンジオール合成反応も進行することが示唆され、銅フタロシアニン合成反応においては、ナノ細孔性炭素の種類を変えることによっても反応が進むことを確認したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は交付申請書にも記載したように、ナノ細孔中の擬高圧効果による高圧有機合成反応の検証をさらに進め、本反応の一般性を証明したいと考えている。また、本年度は補助事業期間の最終年度であるので、これまでの研究の経過や成果を総括して論文や学会発表という形で社会や国民に発信する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の物品購入に関しては、代表者の所属研究機関の変更や別の研究費が配分されたこともあった関係で、445,740円の次年度使用額が生じた。この額を含めた平成25年度の研究費の使用計画は主に以下の2つで占められる予定である。 ①生成物等のキャラクタリゼーションに用いられる透過型電子顕微鏡観察・各種分光測定・X線を使用した構造解析に必要な消耗品費や機器利用料金等にかかる諸経費 ②これまでの研究成果を総括し、論文投稿や学会発表のために必要な旅費等にかかる諸経費
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